A030-登山家

父娘で、御正体山の登山=山梨県

 空が澄み渡った快晴の下、次女と御正体山に登った。父娘(おやこ)の登山は久しぶりだ。以前はいつだったか、思い出せない。少なくとも、ことしは初めてだ。

 年初から父娘の間で、時折り、「山に登ろうか、今度いっしょにマラソンに出ようか」という話題はあがっていた。それぞれ別の生活様式を持つ。ふたりのタイミングがうまく合わなかった。11月になって、師走6日に、父娘ともに同一の日程が取れたのだ。


 私には3人の子どもがいる。長女と息子は運動など見向きもしない。
次女のみが市民マラソン(フル、ハーフ)、登山(月に3、4回)、アクアラング(海外で潜る)、自転車(離島一周)とアクティブな娘だ。年間通して山に登っているし、秋口以降はたびたびフルマラソン、ハーフマラソンに出場している。

 マラソンと登山が私には共有できる。「父娘のDNAがよく似ている」ともいわれる。ただ、私は瀬戸内の島に生まれ育ったから、娘が興味をもつ離島とか、潜水とかにまったく関心がない。お金を掛けてまで離島とか、海に泳ぐにいく気がしないからだ。海よりも、山に登ったほうが好い、という考え方で徹している。

「富士五湖周辺の山はどうかしら?」と娘が御正体山、節刃が岳、杓子岳などを候補に上げてきた。私は迷わずに御正体山ときめた。過去から一度は登りたいと思っていた山だったが、アクセスが悪く実現できていなかったからだ。


 登山計画はすべて娘に任せた。前日、娘からのメールで、村役場と市役所に電話して、雪情報を聞いてみたという。『昨日ちょっと雪が降った。山頂に残っているか否かは不明。下からみるかぎり、雪は見えない。軽アイゼンは持参しよう』という趣旨のことを伝えてきた。防寒着を含めて、それなりの用意をした。

 新宿6時26分の高尾行きの電車に乗り込んだ。大月駅で乗換え、富士急行の谷村町(やむらまち)駅で下車した。この間に地図を見ながら、稜線ルートを登ることに決めた。娘が予約していたタクシーに乗り込み、道坂(どうざか)トンネルで降りた。

 トップを歩く次女は実に余裕がある登り方だった。足は軽い感じだ。11月中旬に戸田ハーフマラソンに出場し、先週は川苔山に登っている。
 私のほうは肩の故障から、ことしマラソンに出ていない。娘との体力の差は歴然としていた。(父親に合わせた歩調だな)それが読み取れた。

 登山口から山頂まで、私がPJニュース用の写真を2、3枚撮るために立ち止まるていど。休憩なしで、約2時間半で山頂に立つ。娘は呼吸も乱れず、息切れもせず、難なくこなせていた。(フルマラソンは4時間前後、走り続ける。それを思えば楽か?)。
     


 父娘は登山のみならず、ふたりの会話を楽しんでいた。娘はことし登った山をいろいろ語る。娘が勤務する某中央官庁での仕事ぶりとか、同僚の話とか(登山、マラソン仲間の女子で、一緒したことがある)、家族のエピソードとか、祖母の病気の話とか、多岐にわたる。そのなかでも興味深かったのは二つあった。

 娘が今年の夏、小学女教諭とふたりして離島の青ヶ島(人口241人)に渡った。(自転車は持ち込めなかったので、テントのみ)。定期船は波浪の日には欠航。確率は五割。運良く出航してくれたが、大波に感じたという。

 船着場では、島の唯一の警察官が手を取って渡してくれたとか、外輪山にテントを張ったら、島の人から「なんでこんな島にきたの?」といい、酔狂な人間にみられたとか。諸々のエピソードが愉しく聞けた。

   


 もうひとつの話題は、ことし夏に槍ヶ岳に2度目のチャレンジで、テントを担いで登った。悪天候で登れず、帰る日になって晴天。槍から見放されたと話す。

 御正体山の山頂で、父娘は昼食を取り、山中湖に向かった。広葉樹の森で、裸木が密集し、景観はなかった。途中一ヶ所、富士山のシャッター・チャンスに恵まれた。やがて、石割山の山頂に着いた。ここは絶景だ。


 眼下の山中湖・平野に降りても、高速バスまで2時間の余裕がある。娘と話しのなかで、妻のいとこが約20年前に脱サラで、経営するペンション『スター・ダスト』に立ち寄ることを提案した。
「迷惑じゃないの。突然訪ねたりして」
「田舎住まいのひとは、案外喜ぶさ」
「ほんと?」
「父は、島育ちだから、そういう田舎の人の刺激はわかるのさ。それに疎遠でもないし、親戚付き合いをしているんだから」
 私はケイタイで連絡を取り、平野まで車で迎えに来てもらった。風呂で汗を流し、コーヒーをご馳走になり、夕方5時半の高速バスで帰路についた。

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