世界遺産にもなれない、富士山の元凶はなにか?
海抜〇メートル(田子の浦)から、富士山頂まで登った。8月8日からスタートしたが、3日間のうち、2日間は台風の影響で大雨だった。下山の途中で、富士山クラブ・会員から、富士山の山小屋が出す杜撰(ずさん)なゴミ処理で、山が汚く荒れてしまったと教えられた。
富士山の登山者が登山道にごみを投げ捨てる光景など見ない。それなのになぜ富士山が汚れているのか。そんな疑問の一端がわかった。
諸悪の根源の一つには、独禁法違反だと思える山小屋の価格協定だ。夕飯はカレーライス一杯だけ。山小屋の撤収時にはごみを撒き散らしているというのだから、お粗末だ。
行政は『夏場二ヶ月の稼ぎで、一年を暮す』という山小屋経営の姿勢を黙認にしてきた。
山小屋の経営権は世襲制だから、登山者の不満や改善を求める声に耳を貸さなくても淘汰されない。かれらは独禁法が適用されない治外法権だ。撤収時に山を汚しても、来年も営業できる。だれからも蹴落とされることはないのだ。
かれらは改善意欲の欠如と収益主義に胡坐をかいてきたのだ。結果として世界中に、富士山のぶざまな醜態をさらしだすことになった。
本来は、山小屋で揚げた収益の大半は環境保護に還元させるべきだ。10ヶ月間も遊んで暮らせる、悠悠自適な生活費に当てるべきではない。し尿処理、生活廃水の浄化装置の義務化などに使うべきだ。それらを推し進めるべきなのに、ひたすら個人の利益追求に邁進してきた。
科学は進歩した。もはや猟師や荷揚げ人が山小屋を経営したような、厳しい環境の時代ではない。最新の機械、高度な通信技術、建築技術、運搬の近代化などは山小屋経営にも利用できるはず。体質の改善は簡単だ。経営のコンサルタントなども積極的に導入すれば、なおさら改善は進む。
公正取引委員会はこれら時代の変化を認識し、自由競争を妨げる山小屋組合の協定には法のメスを入れていくべきだ。自由競争させれば、山小屋に優劣ができてくるし、登山者たちは劣悪な経営の宿泊所には見向きもしなくなる。
そうなれば、かれらは山小屋の内部施設や外回りの環境美化にも自浄努力するだろう。
富士山が世界遺産に登録するためには、公正取引委員会のメスからはじめるべきだ。法の規制外で、あまい汁を吸う体質を斬り、排除すれば、富士山全体の美化につながっていく。それが山を汚す根源を経つことにつながる。
海抜〇メートルから村山古道を歩いた三日間は、富士山が抱える現代の問題点を考える登山にもなった。