えっ、東京にはここしかない、初詣なの=原稲荷神社
年末のNHK紅白歌合戦が終わると、途端に、わが家の前の通りには初詣に向かう人の足音が聞こえてくる。12時をかなり回っても、途切れることはない。とくに子どもたちの嬉々とした、正月を祝うというか、興奮した声が1時過ぎまで室内に響いてくる。
わが家から約20m先の原稲荷神社では毎年、元旦O時から、搗きたての餅が1人3個入りのトレーで配られる。甘酒ももらえる。町内の子どもたちは毎年、それを楽しみにしているのだ。
わが子が幼かった頃、同伴者として、原稲荷神社の深夜の初詣・餅つき大会に連れて出向いていた。下町の子ども特有の天真爛漫な行動で、大勢が焚き火の周りを走り回っていた。
当時は詣でる人も少なく、餅も余りぎみだったのか、食べ放題であった。
同境内はふだん町内の人たちが駅への通り道として利用している。かつて社殿は廃れたような形状で、正月の深夜の餅つき大会だけが子どもの関心を買う、というていどだった。町内の多くのひとは、成田山や浅草寺など人気の寺に初詣に出かけていた。
わが子はもはや30代半ばである。子育てが終わった私は、原稲荷神社の深夜の持ちつき大会にはここ20年ほど無関心だった。ひたすら、除夜の鐘と足音を聞くだけであった。
社殿はこのところ手が加えられて小ぎれいになってきた。それでも、私が認識する元旦の風景は、小さな境内は閑散としており、通りすがりの人が社殿に手を合わせるていどである。あえて同神社に足を運んできたとは思えなかった。