A010-ジャーナリスト

戦争は平和都市をつくる

 ふるさとに帰る都度、「平和」という表現をよく聞く。「広島は平和都市」だと行政も、市民も語る。

 いまや、ウクライナ戦争は緊張の度合いを高めている。アメリカ次期大統領選挙で、トランプ氏が勝てば、ウクライナ支援から撤退するという。バイレン大統領も、来年以降の追加支援予算が取れないだろう。

 アメリカ支援がなくなれば、ウクライナは孤立する。フランスは陸上軍を送りだす構えだ。イギリスも与するだろう。
 これは1853年のクリミア戦争とまったくおなじ。ナイチンゲールで有名になった欧州大戦争である。ロシア(ニコライ一世)がオスマン帝国に侵攻した。英仏がクリミア半島一帯に兵を送り込み、オスマン帝国との連盟軍としてロシア軍と戦う大規模な戦争になった。
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「歴史はくりかえす」
 170年経った今、英仏軍がウクライナ領に入り、その先ロシア領まで踏み込めば、プーチン大統領は公約通り、核弾頭ミサイルを撃ち込む。首都・キーウならば大惨事で、核被爆地「キーウは平和都市」となる。
 戦争は人間を凶器にする。「目には目を、歯には歯を」となると、英仏がモスクワに核報復する。モスクワは平和都市を宣言する。
 両国は首都を変えてでも、戦争をつづける。
 さらに被爆したパリ、ロンドンの平和都市が誕生する。NATO軍の28カ国のなかで核兵器をもたない国すら核攻撃のターゲットにさらされる。


 2023年1月現在、核兵器は一万2512発ある。核はおなじ都市に落とさないので、その数だけ平和都市が生まれる。
 思うに、一世紀前の漫画をみれば、高速道路、新幹線、旅客機による旅行など夢の世界だった。いまや違和感なく実現している。漫画とは未来像の先取りだ。SFやアニメなどには「人類滅亡」の素材があふれている。あと一世紀も待たずして人間は過去40万年の歴史を消し、他の生物に地球を譲るのか。

 ところで、毎年八月六日の広島式典では平和をうたう。「原爆投下がアメリカだったと、広島は言わない」と、プーチン大統領が批判したことがある。

 第二次世界大戦から80年が経ち、世界の若者たちはドイツ・ホロコーストも、日本がどこの国と戦ったのかも殆んど知らない。式典主催者がアメリカによる原爆投下だと言わないのは、子々孫々、後世に歴史の本質を隠す行為だ。

 曲げられた歴史はとかく利用されやすい。独裁者となったプーチン大統領が核兵器のボタンを押しても、NATO諸国に予告と警告をくり返してきたロシアだから、広島式典のように投下国の悪名が残らない、と考える。勝てば免罪符だと言い、核兵器の引き金に利用される。

                    「広島ペン2024下 寄稿」

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