社交ダンスは心身を磨く(中)=80歳で優雅な踊り
阿出川好一さん(81)歳が橘ダンススクールにやってきた。姿勢が良い。身長が高く、手足が長い。格好いい感じだ。
1955(昭和30)年に早稲田大学・商学部を卒業し、メーカーで経理畑を歩んできた。退職後の生き方として、保護司の活動と、ダンスを習いはじめた。いまやダンス歴は20年に及ぶ。
橘ダンススクールに通いはじめて約6年間である。自宅から同教室まで40-45分かかる。これまで、幾つかダンス教室の門をたたいたようだ。
「プロにも、ピンからキリまであります。中高年齢者に対しては中途半端な指導する人がいる。それでは困る」と前置きしたうえで、
「橘さんは元全日本チャンピオンで、雲の上の人です。しかし、技術は出し惜しみしない。初心者でも丁寧に教えてくれます。橘さんは本当のテクニックを教えてくれる。ダンスは楽しいし、やりがいと生きがいになっています」
と阿出川さんは話す。
「阿出川さんは探究心が強い。ダンス用語に対しても質問される。素朴だけれど、大事なところがあるのです。私自身がはっとさせられたりします」
橘弘子さんは話す。
技術的な面は如何ですか。
「阿出川さんは年齢から見たら、ダンスのテクニックがすごい。リズム感は良いです。頭脳が明晰です。新しいことは大変だけれど、コツコツ努力される。あきらめない精神があります。ステップは時にあれっ、と思う、間違いはままありますけど、まだ伸びますよ。できないと悔しがる」、その熱意と向上心があるかぎり、大丈夫です、と言い切った。
人間は誰もがいつか年齢的な限界に突き当たる。阿出川さんは何歳までダンスをやられますか。
「教室の客種として、私は自分の存在を考えています。老人がダンス教室にトボトボやってくれば、迷惑になります。悪貨は良貨を駆逐する。変な客が一人でもいると、全体の質を下げてします。そこらが見極めだと考えています。それまでは精一杯やりたい」
ダンスに対する熱意が、若さの秘訣になっているのだろう。
長野在住の娘の好美さんが、父親のレッスンを見に来ていた。感想を聞いてみた。
「格好良かった。発表会は何度かありますが、教室風景は初めてです。このように積み上げているんだな、と思いました。お爺ちゃんぽくない。それがうれしい」
父は家でもよく身体を動かす。朝起きると、父は体操で身体をよく動かしています、と教えてくれた。
「私は痩せようと思って体操をしていても、心が折れます。私は父から運動神経を貰わなかった」
と明るく話していた。
良い父娘だと感じさせられた。
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