世界最大のノコギリ楽器の美しい旋律に、聴衆は酔う=東京・西新井
のこぎりキング下田(本名・下田尚保)さんは世界最大のノコギリ楽器をつかった、卓越した演奏家である。10月6日(日)、東京・西新井文化ホールで、第8回「のこぎり音楽チャリティー・コンサート」を開催した。親しみのある21曲で、約700人の聴衆を魅了した。
スペシャル・ゲストは楠堂浩己とFinest Jazz Menで、最初の曲「ザッツ・ア・プレンティ」を奏でながら、会場を華やかに盛り上げた。司会はTVアナウンサーの堀江慶子さんで、明るい口調で、のこぎりキング下田さんを舞台に招き入れた。
日本の代表的な童謡・歌曲「月の沙漠」、「里の秋」などで、すぐさま聴衆の心をしっかりつかむ。 さらには明治40年に誕生した、「更けゆく秋の夜~」 で始まる「旅愁」へとつづく。
ノコギリは大小4種で、曲によって使い分けられる。その一つはノコギリの先端・取っ手に鹿の角が使われていた。
司会の堀江さんから、各曲目の紹介が入る。「千の風になって」では、USAで話題となった詩『Do not stand at my grave and weep』を2001年に、新井満さんが日本語に訳し、自ら曲を付け、 秋川雅史さんが歌って大ヒットした、と語る。
聴衆の一人・豊島区の滝口さん(57歳・女性)は、「千の風になっては、ノコギリ楽器にとても似合った曲ですね。心に響きました」と、第1部の終了後に、感想を述べてくれた。
のこぎりキング下田さんは、東京都公認ヘブンアーティストで、国内の演奏活動は幅広い。豪華客船「にっぽん丸」「ぱしふぃっくびいなす」のクルーズの演奏、浅草東洋館で隔月レギュラー出演している。さらにフランス・パリなど海外公演の実績を持つ国際派アーティストである。
下田さんの曲の合間に、ヴォーカリストの絵馬優子さんが特別出演し、美声を会場に響かせた。
第2部は「男はつらいよ」、「夜来香」、「ダイナ」などが続く。のこぎりキング下田さんはレパートリーの広さが特徴だ。多彩に曲を披露する。
下田さんはさかのぼれば、早稲田大学・応援団の吹奏楽団に在籍していた。長い演奏人生で、研鑽を積んできて、いまや名高い円熟したアーティストである。
他方で、下田さんには童謡の作詞・作曲家たちの出身地や、曲の発祥地などを訪ね歩き、各メロディーのルーツを研究する熱心さがある。それだけに、それら曲を奏でると、メロディーが聴衆の心奥にまで入り込む。魅了させられた観客から、曲の合間には、「心が癒させるわ」という感嘆の声が聞こえてくる。
終演に近くなると、ヴォーカリスト・絵馬優子さんが舞台に立ち、会場と一体になって「故郷」を合唱する。そして、下田さんが「埴生の宿」「ディズニーメドレー」でフィナーレを飾った。会場からはアンコールをもとめる大きな拍手が鳴り止まなかった。
今回も、入場料の一部は足立区社会福祉協議会と、東日本大震災復興の義捐金として福島県・相馬市に贈られた。
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