大阪も水没するのか。南海トラフで、JR大阪駅には津波が最大5m
「あすは、わが身」
それが災害列島に住む人間の心構えである。
大阪の市民は、大地震が来たら、津波を警戒して、地下鉄から逃げた方がいい。私たちは東北と関係ないと思ったら、危ない。
「南海トラフ巨大地震」で3・11なみの地震規模のマグニチュード9・1が発生すれば、約2時間後には大阪湾が大津波に襲われる、と大阪府は公式に発表した。さきの中間想定の見直しを図ったものだ。
津波が到達した後、JR大阪駅(北区)など市西部一帯は深さ最大5メートルで水没するという。
大阪中心部は地下鉄網が発達している。地上が水没すれば、当然ながら、地下に浸水する。津波に襲われたら、地下からは強力な海水の水圧で逃げ切れない。地下街も、地下鉄も水没する。ここまで具体的に発表していないが、簡単に想像がつく。
一部報道によれば、松井一郎知事は8日の記者会見で、「厳しい想定だが、被害が起きてから『想定外だった』と言い訳することはあってはならない。堤防崩壊を防ぐ強化工事などに力を注ぎたい」と述べている。内心は、地下街、地下鉄の水没など、脳裏に浮かべた発言だろう。
行政は地下鉄浸水など最大のリスクを明瞭に言わない。これはある種の危機管理の欠如である。
危険と危機との違いを知ろう。
危険とは、まったく想定をしておらず、突然、危ない目に遭うことである。
危機とは、システムの欠陥から、危ない目に遭うことである。行政が明瞭に予測しない地下浸水はシステムの欠陥である。
穂高健一著『海は憎まず』でも、東北地方で行政が定めた「広域避難所」が低地すぎて、大勢の人が死んでいる、と被災地の事例を取り上げている。行政の方々も多く亡くなっているから、一概に批判もできない。だが、この経験は生かさなければならない。
同書では、大都会が津波に襲われた場合の、地下鉄の危険性なども取り上げている。
阪神淡路大地震のまえ、多くの人には「東京は地震が多い。関西は地震がないところ」、という先入観があった。それが覆されて、大勢の犠牲者が出た。
3・11の大津波は遠く東北地方のできごとではない、他人ごとではない。大阪湾だって大津波の危険地域なのだと認識しよう。
「あすはわが身である」
穂高健一著『海は憎まず』で、津波が襲来したときの疑似体験をしておくと、関西の人でも、生死の境の判断に役立つだろう。教育関係者も、幼い生徒を大都会でどのように避難誘導するべきか、と日頃の考えに及ぶだろう。