A010-ジャーナリスト

『白根大凧合戦』は激闘だ。白根は燃える(下)=写真で観戦

 合戦をまえにした、24畳の大凧が時間差で、じゅんぐり西岸にやってくる。その凧は土手の道いっぱいだけに、巨大さがわかる。


 駆ける。走る。女性も真剣だ。

 巨大な凧は太い25mmのロープで、引き揚げられていく。一つ大凧を上げるなかには、大勢の女性の姿もある。これが白根大凧合戦の特徴だ
 

 空中で大凧のロープが絡み合えば、綱引合戦だ。

 「行くぞ。引け、引け」と大声で気合を入れてロープを引く。一年に一度はここに気力、体力、精神力のすべてを集中させる。
 良い人生だと思う。


 綱引合戦は、地区の名誉を賭けた真剣勝負だ。

 数十人が土手から町内の路地までロープを伸ばし、懸命に引く。

 全員が一本のロープに気持ちを集中させる。ここには本ものの「絆」があった。

 3・11大震災のメディアに踊らされた、いまは忘れ去った、一過性の「絆」とはちがう。
 

 これこそ全知全能を賭けた、激闘の一瞬だ。

 

 凧の動きは力任せだけでない、風を読む。微妙な力配分も必要だ。
 低空で、川面を滑らせるように引く。 

 「おい、おい。川に落とすなよ」
 ロープ先頭者の経験がものをいう。 


 戦いにはアクシデントがつきものだ。

 蹴躓(けつまず)いて転倒する引手もいる。

 大会の開会式では、役員からくどいほど、「怪我をしないように」という注意事項があった。

 それらが現実のものになる。


 六角凧は操作次第で、空中を華麗に舞う。

 ロープの後方の引手の方が、ハラハラドキドキ感の表情だった。

 大凧の生命はロープだ。

 戦況を見つめる若者たちは、出番への闘魂を強めている。

 


 江戸時代からの約300年の大凧の伝統は、若者たちに引き継がれていく。

 白根町から育った人たちも、この季節には年次休暇をもらい、全国から戻ってくる。


 大人の大凧は中学生から参加する。

 老若男女が一つになれる。それが世界一ともいわれる、大凧合戦の所以(ゆえん)だろう。


                         共同取材
                         かつしかPPクラブ
                         郡山利行・穂高健一  

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