A010-ジャーナリスト

東電の社長室に放射能(死の灰)汚染土を送ろう=小出裕章さん

 私の友人から7月7日(土)「商社9条の会」の講演に誘われた。場所は東京・一ツ橋の日本教育会館で、講師は小出裕章さん(京都大学・原子炉実験所助教)、タイトルは「隠された原発の真実」である。雨の日だったが、フクシマ原発の本当のことを知りたい、という参加者たちで、約700人の会場が満席だった。

「原子力には平和利用もない。すべてが軍事にからむ」
 そう主張する小出さんは大学を選ぶとき、原子力がきっと人類に役立つ、という気持ちで原子力工学科に進んだという。
「ですから、ある時期まで、私は加担者のひとりでした」
 小出さんは原子力の平和利用に懐疑的になった。いまでは国家にたてつく、数少ない原子力研究者である。

 100万キロの原子力発電所は一日ごとに、広島・長崎3-4発分に相当する、核分裂反応を行わせる機械である。
「あらゆる機械には絶対安全はない。東電はウソ、だまし、脅しで、国民を欺いてきた。これらはフクシマ原発事故で露呈した」
 1966年からわが国は原発を作り続けてきた。法律では、大都会に原発を作れない。(非居住区、低人口地帯)、過疎化の地方が、金と政治で原子力を掴まされてきた。この46年間で、わが国は広島原爆の120万発分の死の灰(200種類の放射能物質)を作ってきた。

 人間には放射能(死の灰)を無毒化する力はない。高レベル放射能を100万年にわたり隔離することができるのだろうか。高レベルの廃棄物は隔離処分しかない。あるときは南極の厚い氷下に沈める、深海に埋める、という案もあったけれど、国際条約で禁止された。いまは深い岩盤の下に埋める、という検討がなされている。

 日本は地震大国である。地震の震源地はさらなる数十キロ下であり、地震が発生すれば地層をバリバリ割ってしまう。100万年の間には、きっと地震で放射能が流れ出す。
「原発はトイレのないマンションと同じで、作ってはいけないものだった」
 国家は原発を推進し、マスコミはそれを宣伝する構造ができあがった。

 フクシマ原発事故で、セシウムが広島の原爆170発分が大気中にばらまかれた。
「子どもへの影響が心配だ」
 と小出さんは心から心配する。
 人間は精子と卵子が一つに結合してから、分裂していく。細胞分裂により、遺伝子が伝わる。放射能はその遺伝子に悪影響を与える。


 これまで法律で(大学の原子力研究所などを含め)4万ベクトル以上は放射能管理区域とし、放射能で汚染された物は域外にもちだしてはいけない、とされてきた。つまり、それらで被爆したら人体に影響を及ぼす、と厳重な管理がなされてきたのだ。しかし、フクシマ原発事故で、それを反故にしてしまった。
 3.11原発事故の後、北風が吹き、放射能が南下してきた。従来の放射能管理区域(4万ベクトル/一㎡)以上のレベルが現在確認されているのは福島県、栃木県、茨城県、千葉県、東京都の一部地域である。
「年寄りはさほど影響はない。乳幼児が最も危ない。一つの遺伝子が壊されると、それが次々と細胞分裂から疲弊して広がっていくからです」
 東京電力、国会議員、地方議員、学者は誰一人責任を取らない。
「それらの人たちを選び認めてきたのは私たちです。私たちの世代の責任です。私たち自身がどう責任を取るか。個々人がいかなる方法があるのでしょうか。放射能はもともと東電の所有物です。フクシマ原発の汚染された土壌の表土をはぎ取り、宅配便で持ち主・東電に送り返そう。そこからスタートしたらいかがでしょうか」
 小出さんの提唱で、喝采を得ていた。

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