国際ペン・東京大会には、環境の記録映画が上映予定
日本ペンクラブは、2010年9月に国際ペン大会・東京大会を開催する。東京での開催は、第1回が川端康成会長(1957年)で、テーマ「東西文学の相互影響」)だった。第2回は井上靖会長(1984年)で、「核状況下における文学-なぜわれわれは書くのか」をテーマにした。
今回は25年振りで、東京大会のテーマは【環境と文学】である。
日本ペンクラブ環境委員会(中村敦夫委員長)の活動は活発で、月1回は会員向けのミニイベントを行っている。
今回は8月3日、日本ペンクラブ(東京・中央区)3階会議室で、映画監督の岩崎雅典さんを招き、映画『平成 熊あらし ~異常出没を追う』を上映した。定員の30人が満席だった。
同映画の狙いは、「2006年にはツキノワグマが4000頭以上も捕殺された。なぜ、熊は人里に出没したのか。人は熊とどう付き合えばいいのか」という問題提議である。マタギ(猟師)の文化、熊の生態、保護活動など、三者の立場から描いている。
岩崎監督は「人と熊がどう共存できるか、と考えてもらうために制作した」と述べた。日本列島に熊はどのくらい生存しているのか。頭数調査する学者はほとんどいない。一説には数万頭だという。それは定かではない。九州の熊はすでに絶滅し、四国も絶える寸前、という事実は確かだという。
質疑応答に入った。質問に応えて、「06~09年3月にかけて作成しました。文部科学省選定(少年、青年・成人向き)の受けました」と岩崎監督は語る。
森が拡大造林で、熊の住む場所がなくなった。ダムができると、熊の棲む場所が分断されて、人里に出てくるようになる。
映画のなかで、「かつてマタギと熊との緊張関係があって、人間との境界線ができていた」と、マタギが語る。
「この100年間に人間は4倍増えた。熊よりも、これが問題かもしれない」という質問が出た。岩崎監督は、100年前の熊の生存データはないという。
参加者からは、「国有林と民有林の違いは大きい。民有林は過去からの伝統を引き次ぐ保全が施されている。国有林は林野庁が好き勝手に伐採などやってきた。自然遺産になったとたんに、人々の入山を排除した。人間にも熊にも問題だ」と指摘があった。
岩崎監督は、「むかしは里山で薪を取っていた。現在は薪ストーブがないから、薪を必要としない。そのために里山が駄目になり、藪(やぶ)化している。山と民家(市街地など)の境界線がなくなり、熊が街まで降りてくる」と実態を語る。「過疎化のなかで、山を回復させることは、そう簡単じゃない」と延べた。
里山について、は猿、鹿、イノシシがのさばり、生態系を乱している。襲って食べる狼が、日本にいなくなった。それでバランスがわるくなっている、と説も紹介した。
私も意見を述べた。「熊は人を殺すから大騒ぎする。それよりも、鹿の異常繁殖が問題である、秩父、大菩薩、八ヶ岳、南アルプスの高山植物が全滅している」と説明した上で、岩崎監督は映画で「鹿の問題を追う」という考えはないかと聞いた。「鹿はやりたいが、撮影予算との兼ね合いがあるから」と話していた。
中村敦夫委員長からは、「来年の国際ペン・東京大会では、会場のひとつ早稲田大学で、これら環境に関連した映画を上映したい」と抱負を述べた。
(撮影:滝アヤ、8月3日)