私は、この環境問題を、なぜメルマガ記事にしなかったか
日本ペンクラブの総会が、26日、東京會舘で行われた。総会のあと、緊急講演会が行われた。講師は岡田晴恵さん(同会員、国立感染研究所)で、テーマは「鳥インフルエンザ(H5NI)への警鐘」だった。30分の予定を40分間にわたり、壇上で身振り手振り、熱情的な早口で、この問題を語った。
岡田さんは今年2月、同クラブの環境委員会研究会で、鳥インフルエンザ(H5NI)について報告を行った。同クラブ会報3月号には、その内容が載った。会報を読んだ会員から、岡田さんの講演を聞きたいという声があり、今回はそれに応えたもの。他方で、4月には十和田湖(秋田県)で、衰弱したり死んだりした白鳥から、毒性の強いH5NIが発見されたことから、緊急講演会となったのだ。
岡田さんはWHOでは医療問題とともに、危機管理の面からも警鐘を鳴らしている。USAではブッシュ政権の下で、安全保障の面から1兆円もつぎ込み、鳥インフルエンザ(H5NI)の対策に乗り出している、と語る。日本となると、混乱を回避する目的から情報を押さえている、と打ち明ける。
現在はポーターレスの時代。毒性の強いH5NIが人体で発症すれば、一気に世界中に蔓延する。世界大流行したペストによる死傷者や経済な破綻をダブらせる。他方で、日本はワクチンの確保など危機対策面では、お寒いかぎり、と訴える。岡田さんは厚生省の関係者だという。それだけに信憑性が強まる。ある意味で、内部告発的に、日本政府の貧弱なワクチン対策をなじり、批判していた。
岡田さんは今月初めに経団連で、企業トップをまえにして同テーマの講演を行っている。そして、同ウイルスによる、日本経済の破綻について警鐘を鳴らしたという。「日本ペンクラブの皆さんも、この問題に目を向けてください。大変な危機状況にあるんです」と、最後には涙を流しながら訴えた。
私は演台にICレコーダーをセットして録音し、メモも取り、写真撮影もしていた。
講演が終了後は、会員による懇親会となった。「日本ペンクラブ・メルマガ」の鈴木康之さん・編集(広報委員会・副委員長)に、この講演の記事は書きませんから、と伝えた。
理由としては、「劇場型のような身振り手振りを使い、熱情的に早口で語る人の話しは、こちら(聞き手)に考える暇を与えてくれないから、論旨を吟味できない。どうしても、懐疑的になる。乗せられてしまうことへの警戒心が起きてしまう」と話した。
岡田さんは、WHO発表がさも水戸黄門の印籠のように、金科玉条のごとく語っていた。しかし、WHOメンバーにも、鳥インフルエンザ(H5NI)がペスト並みに大流行しないと異論を唱える人はいるのではないか。そうした疑いや考えを差し込む間もくれていない早口だった。
ブッシュ政権下では、この問題で危機安全保障から1兆円を使っているという。会場には具体的な資料が配布されていない。裏づけとか、確証をもてない金額や数字は安易に記事にできない。また使わない、という姿勢を持つ。
メルマガの読者は会員のみならず、文化人、学者、マスコミ人など知的水準の高い人たちだ。日本ペンクラブから外部にむけられて配信しているから、講演者(会員)のたんなる受け売り記事は書きたくなかった。
現在、原油の高騰から、カリブ海のハイチなどは極貧状態に陥っている。国民一人当たり1日1ドル前後の所得だ。餓死者も出ている。
ブッシュ政権はイラクに多くの戦費をつぎ込み、挙句の果てに石油を高騰させた。それが貧しい国をいっそう貧しくさせている。他方で、アメリカ国民はいまのところ鳥インフルエンザ(H5NI)の死者を1人も出していない。
だったら、カリブ海に面した隣国ハイチに1億ドルでも援助したら、どうなんだろう。金の使い道が違っていないか、とジャーナリストの視線になる。
ソ連が勢力を持っていた冷戦時代をかえりみた。いまにも核戦争が始まる。第二次世界大戦以上の死傷者が出る。日本は無防備だ。核シェルターの保有率は皆無だ。日本政府は無能だ、と訴える人がずいぶんいた。一度も核戦争は起きなかった。強烈に危機を訴えたひとたちは、いまはどこで頬被りしているのだろうか、音無しだ。
今回の緊急講演会を『日本ペンクラブ・メルマガ』の記事として、配信すれば、さらに多くの人の目に触れるだろう。壇上の岡田さんには、その期待もあったと思う。(会報委員会による、会員向け会報は記事になると思う)
日本ペンクラブは言論の自由・表現の自由を掲げる。それは、『書ける自由』、さらには『書きたくない自由』もあると思う。
乾杯の音頭で、浅田次郎さんが「私には読むスピードが身についています。早口の話は消化不良になってしまいます」とちくりと言った。