東京下町の情緒100景は、25作品まで進む
100景は4分の1の折り返し、25作品まで進んできた。蒲池潤さんが、写真付きでリライトして紹介してくれている。謝意を表したい。同時に、ここで紹介したい。
25景を写真で観る東京下町の情緒100景
写真をクリックすれば、リライト記事まで入れます。
当初、【ジャーナリスト】ではどんなものを書くべきか、と思慮と迷いがあった。PJニュースとダブらないもの。これが最低の条件だった。考えた末に、メディアにも、PJニュースにも載らないような、小さなニュースを取り上げ、写真と記事で紹介してみようと決めた。
タイトルとして、『下町の情緒』が浮かんだ。住まいは葛飾区で、『寅さん・映画』の舞台にもなった処だ。掘り下げていけば、それなりに材料はあるだろうと考えた。無名の、小さな素材を取り上げたうえで、一本ずつ味がある文章で仕上げていく。じっくり情緒を味わってもらう作品にする、と方向を決めた。
いざ執筆をすると、30年来の住居のまわりの風景は、感動がまったくないほど、目が慣れきっていた。カメラとペンをもって取材に出ても、どこもありきたりの変化のない存在だった。そうこうするうちに、100景も見つけられるかな、という気持ちに陥った。
目がなれた場所での再発見は実にむずかしい。柴又、葛西、木場、浅草とすこし領域を拡げれば、素材はかなりあるはず。しかし、安易に流されていくと、『下町ガイドブック』になってしまうと考えた。どこまでも、取材の目で、小さな事柄を掘り下げることに徹した。
10作あたりで、おもいのほか材料不足だと、ふたたび思い知らされた。老舗の店が多いところ。煎餅焼、人形焼、モツ煮、行列のできるコロッケ屋、古い大衆食堂、それらを一軒ずつ取り上げることも考えた。こうなると材料に不足はしない。
一例だが、古い暖簾のモツ煮は人気のある呑み屋。1人1000円で呑める。下町ファンは遠く、八王子、横浜などからネットで調べてやってくる。他方で、ネットで店を紹介する気すらもない店主がたくさんいる。それら下町の情がある店は多い。
こうした店を取り上げれば、100景へとさらなる推進になるが、これも安易に飛びつかず、先ざきの展開だとくり下げた。どこまでも身近な下町風景の再評価。つまり、ニュースにもならない素材のニュースだった。
思わぬひとから、【東京下町の情緒100景】を読んでいるよ、といわれることがある。それはうれしいものだ。
執筆に波がありながらも4分の1はきた。この先もジャーナリストの目で、メディアには取り上げられないほど、小さなニュースを見つけ出し、小説家として、濃くのある文体と文章で書くつもりだ。