東京下町の情緒100景(082 花屋)
けさも早朝に市場から彩り豊かな花を仕入れてきた。朝10時の開店準備で、最も忙しい。それでも、きょうはどんな客が来るのだろうか、と気になる。
人生の幸福でも、不幸でも、花だけはつきものだから。毎日いろいろな買いにきてくれる。
「恋人にプレゼントの花は何がいいかな?」
若い男性が相談してくれたならば、きょうならば、ローズマリーのバラを勧めてあげよう。
夫婦仲のよい夫が、{愛妻の誕生祝に花を贈るんだ」といったら、新婚時代のの思い出の花を選ぶかもしれない。差し出がましい、花のお勧めなどは止めよう。商売には控えめも大切だし。
「玄関に一輪挿しの花を買いたいの。週に一度、一本だけで悪いわね」
路地裏の40代の女性がやってくる日だ。彼女は香りのよい花が好きだという。お香代わりなのかしら。きっと家のなかは整然と片付いるのだと思うわ。