東京下町の情緒100景

東京下町の情緒100景 (朝の陽は西から昇る 002)

 陽が西から昇るといったら、笑う人は多いだろう。葛飾区のど真ん中を流れる中川は、やたら曲がりくねっている。愉快な現象が楽しめる。

 下流からでも、上流からでもいい、徒歩で一時間も歩いていると、陽が進行方向の右手に行ったり、左手に行ったする。
 川面に輝く太陽は、いのちの源泉だ。右に左にと陽光を横目で見ながら、散策すると面白い。太陽だけではない、夜の星座も、月も同様である。中川は極端な蛇行で、鋭角にも曲っている。

 方向感覚の錯覚が楽しめる場所だ。生真面目に、磁石など持ってくると、愚の骨頂だ。

 仲間や夫婦と連れ立って楽しむこともできる。「あれっ。太陽が逆から昇っているぞ」と指す。これは結構楽しいものだ。

 中流には奥戸橋がある。鉄骨が剥き出しの、ゴツゴツした橋だ。古いから下町の味がしっかり染まっているのだ。

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東京下町の情緒100景 (路地裏が魅力 001)

 低い屋根の庇(ひさし)で縁取られた青空の下から、東京下町人情が生まれる。生きる知恵もでてくる。この町の情緒の原点を探して歩いてみた。


 朝の柔らかい陽が路地の狭い空間に射す。 家屋の壁面が立体的なオープンガーデンだった。花を愛するひとには庭がなくても、ガーデニングを楽しむ知恵があった。

 色彩豊かな花はまだ露にぬれていた。通りすがりの女性が足を止めた。
「きれいね。いつも楽しませてもらっているわ」
 そんなふうに花の手入れをはじめた家人に声をかけた。ふたりはさほど親しい関係でもないらしい。
「一輪持っていきますか」
 ごく自然な会話が交わされている。
 剪定バサミの音が小気味よい。
「これはなんていう花ですの?」
 カサブランカ、日々草、ポーチュラカ、瑠璃まつり、ジニア。一つひとつ説明がある。気さくな会話がつづく。花はまさに心の潤滑油だ。

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