東京下町の情緒100景(090 下町の外国人さん)
更新日:2007年11月13日
ヨーロッパ系の人が、怒っていたことがある。日本人は『外国人』といえば、アメリカ人だと決めつけている。日本人は身近なアジアなど頭に描かず、視野のなかにない。世界はひとつにしても、アメリカ一辺倒では、日本人の意識の底は浅過ぎる。淋しい限りだ。
下町の商店街にも、住宅地にも東南アジア、中国、韓国のひとが増えてきた。国際色豊かな多彩な肌が日常のなかでも、ごく自然に見られる。
外国人の彼女たちがウインドー・ショッピングしている。陳列されたバッグ、宝石、アクセサリーなどを凝視している。彼女たちの目はガラス越しに光っている。
彼女たちの背中には異国の情感がある。
人間はだれしも、故郷を想う。親を想う。友を想う。ふたりは遠く祖国の親やきょうだいの顔を思い浮かべ、「どれが喜ばれるのかしら」と思慮しているに違いない。贈り物選びは心が母国とつながっている瞬間だ。
下町には国境がない。世界は一つ。アジア系のひとにも親切だ。肌に関係なく、手を取り合って生きていける、心を結び合える、それが東京下町だ。