東京下町の情緒100景(080 青い電車)
更新日:2007年9月 5日
最寄り駅の上り線には、青い電車が静かに入ってきた。ホームの乗客たちは思わず、めずらしさに目を見張る。ことのほかホームが華やかにみえる。
乗客たちは時おりの情景だけに、一度立ち止まり、『BLUE SKY TRAIN』の車体をじっと見つめる。青い車体は洒落ている。なにかしら夢の世界に運んでくれるような気持ちになる。
東京・下町には田舎がないひとが多い。だから、青い寝台列車に乗って帰省したとか、上京してきたとか、故郷と結びつく話題はほとんどない。でも、遠い旅をした記憶は数々ある。
遠い旅をさせてくれる、青い寝台列車。そこには夢があった。
昭和の半ば頃は東京駅発、上野発からの遠距離列車となると、「BLUE TRAIN」が主役だった。青い列車に乗りたくて、お金をためて遠距離の旅に出かけた。
九州、北海道、東北には、青い寝台列車は一晩かかったものだ。そこまでの長い距離が苦痛ではなかった。時間のむだも感じず、楽しかった。
目のまえの青い電車が、出発ベルで動きはじめた。妙に名残惜しい気持ちになった。