A065-東京下町の情緒100景

東京下町の情緒100景(057 富士山)

 今年から4月29日が『昭和の日』となった。ゴールデンウィークのスタート日だから、東京全体がスモッグのない青空が期待できた。


 富士山からここ下町まで約150kmの距離だ。快晴で風が強く、空気が澄めば、下町からでもビルの隙間に、窮屈そうな富士山が見えることがある。
 とくに真冬の、透明感のある早朝とか、シルエットになる夕暮れ前とかは、富士山がいい雰囲気で観られる。

 過去にはタイミングが悪く、下町から見た富士山の写真が撮れず、100景にも掲載できなかった。


 朝10時過ぎだった。カメラを手にして中川の護岸に出かけてみた。川辺は春霞のように、やや透明感がない空気だ。失望というか、期待度が下がった。

 スモッグがないので、西の彼方には小粒な富士山が見えた。特殊なフィルターがあれば、遠方にかすむ富士山がしっかり浮かぶ。それらは持っていなかった。


 かすむ富士山では締りのない写真になってしまう。ここはアクセントが必要だ。日祭日ともなると、高速モーターボートの往き来が多い。10分間も待てば、一隻や二隻はやってくる。狙い通り、カメラがボートを捉えた。

『富士山』という表題をつけてみた。しかし、手前の高速モーターボートばかりが目立ち、富士山の存在は薄い。富士山は観るにしろ、撮るにしろ、やはり真冬がよい。

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