東京下町の情緒100景(046 草すべり)
更新日:2007年3月19日
4歳と2歳の姉妹が草土手で遊んでいた。きょうは澄みきった青空だ。太陽がいっぱいにそそぐ。土手の草が陽光でつややかに輝く。春の匂いを発散させている。伸びる草は育つ子どもたちにエネルギーを与えている。
幼い姉妹には、草の弾力が心地好いのだろう、走っては転ぶ。姉が立ち上がっては転ぶ。転んでもケガなどしない。また、立ち上がっては転ぶ。妹も真似て笑いながら転ぶ。戯れの幼子の明るい声がひびく。数十年前にさかのぼっても、同じ遊びがあった。
土手下では両親が優しい目で、わが娘を見守る。こんどは草すべりだ。戯れる楽しげな笑いは止まない。草木も子どもたちもまぶしく輝く。
土手道では自転車に乗る人、散策の人、それぞれが気にも留めず行きかう。いつもの下町の顔だから、ごく自然に受け入れている。老人にも子ども時代があった。
子どもは草すべりがすきだと知っている。だから、歳月が経っても、下町の日常の風景はいつもどおりだ。今年もいつもどおり、下町の春は土手からやってきた。