A065-東京下町の情緒100景

東京下町の情緒100景(042 新装開店)

 街に新しい店ができた。真っ赤に塗られた派手な建物だ。遠くからでも目立つ、中華料理屋さんだ。
 玄関の両側には大きな花束が四つ、五つとならぶ。お祭り気分だ。

 店内も朱に塗られた彩で、異国ムードたっぷり。初日から大繁盛で、合い席だ。下町ならで、「どうぞ。どうぞ」と客どうしが空席をなくす。

 チャイナ服の女性が、「お昼ランチあるね。なんにするね?」と微笑みで、注文をとる。
 差し出された、ジャスミン茶の香りがいい。
 メニューは豊富だ。麻婆豆腐の定食を食べてみようかな。ご飯のお変わり自由は魅力だから。
 
 味はピリ辛いで、とても美味しい。食はすすみ、ライスをお変わりした。「ご飯もうないね。水餃子でいいね」と6個もくれた。ずいぶん得した気分だ。

 2時になれば、客席が空いてきた。チャイナのウエイトレスにも余裕が出てきた。
「珈琲、飲むね」とマグカップで、インスタントコーヒーを出してくれた。家族の一員みたいに、砂糖入り、スプーンもカップの中に入れ、かき回してくれている。
 下町に似合った、中華店ができものだ。

 また、来ようかな。「また来てね」と先に言われてしまった。

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