東京下町の情緒100景(036 スポーツ少年)
更新日:2007年2月14日
東京湾の河口近くにも、中流にも、上流にも。荒川には球戯場がいくつあるのだろうか。
右岸にも、左岸にも、グランドがある。土日曜ともなると、どこかしこで、サッカーや野球のクラブ対校試合が行われている。
夕暮れのチャイムが遠くから鳴りひびいた。同時に、グランドで笛が鳴った。みんな張り詰めた緊張から開放された。そして、監督のまわりに集まり、五分間の反省会があった。
タオルで上半身の汗をぬぐったら、揃いのジャージーを着、家路に向かう。
チームメートは上流に、対戦チームは下流へと別れていく。ボールを蹴り足りなかった者、疲れきった者、膝のケガで参加できなかった者。さまざまだ。
「お腹が空いたな」
「あんなチームに負けるなんて、悔しいな」
「きょうはテレビで、試合を見なくちゃ」
「これから、塾なんだ」
「じゃあな」
「バイバイ」
仲間の一人が土手を越えて帰っていく。ぼくの家ももうすぐだ。