東京下町の情緒100景(031 ジョギング・ロード)
更新日:2007年1月10日
東京の河川は下町に表情を作る。幾重にも蛇行した川筋は、その名も七曲と呼ぶ。竹を折り曲げても、こうまでも折り曲げられないだろう。
護岸道路はすべてジョギング・ロード。朝夕に、ジョガーたちの姿がある。スポーツウエアはさまざまだ。孤独なランナーもいれば、仲間と走るものもいる。 それぞれが自分自身のからだや呼吸と向かい合っている。
太陽の動きで、川は刻々と顔の表情を変える。七曲は見る角度で情景が次々に変化する。 ジョガーやランナーはいくら七曲を回っても、風景には見飽きない。
五月にはサツキが両岸につづく。冬場には雪峰の富士山の山容がみえる。川面にはモーターボートが疾走する。川舟が往来する。川の情緒が満遍なくみられる。贅沢なジョギング・ロードをもつ下町だ。
自然が作る技なのだろうか。Bコース一周が3.5キロだから、六周で21キロのハーフマラソン。12周すれば、ちょうど42キロのマラソン距離になる。
3コースはどのコースも信号なしだ。車両の進入はすべて禁止。ランナーやジョガーは存分に走れる。
200メートルの距離盤が舗道に埋め込まれている。ランナーたちは、日々に正確なタイムがみずから計れる。体力に見合ったスピードが保てる。エントリーしている大会に見合った走りの調整もできる。
速さなどまったく関係なく、ゆっくりゆっくり走っているジョガーもいる。
中学生が体育の授業で、七曲のBコースの一周の競技がある。先頭を争う男子もいれば、太ったからだで、辛そうに走る生徒もいる。わずかな距離で歩き出す女子もいる。
タイムを計る教師がゴールで待つ。そこだけは懸命に走りだす。