東京下町の情緒100景(川舟 028)
更新日:2006年12月 5日
徳川時代は、江戸城下の深川界隈が都市の中心だった。川や堀などの水路が発達していた。物資の運搬のみならず、川遊びが流行していた。武士や豪商が川舟で、芸者が弾く三味線、都都逸(どどいつ)などを聴きながら、酒を飲む。風流な遊びの一つだった。
東京湾の沿岸は漁業や海苔の養殖が盛んだった。明治、大正と引き継がれてきた。しかし、昭和の高度成長期になると、漁業は職業としては消えていった。
春は隅田川の桜見物だ。花吹雪が川面を薄紅色に染める。春風で無数の花弁が波打つ。対岸の日本堤には大勢の人出をみる。こちらは滝廉太郎作曲の歌を口ずさむ。
初夏には浦安沖のはぜ釣りだ。船頭が穴場を教えてくれる。釣れる、釣れる。つりの腕自慢の一つもしたくなる。
夏は両国の花火だ。多摩川、江戸川、中川、荒川の川舟の溜まり場から、川舟が次々と集まる。夜空では色彩豊かな競演をくり広げる。川舟の船頭は場所取りで忙しい。
納涼船は浴衣姿の男女が似合う。半年もすれば、コートを着た男女が手を取り合って、板張りの桟橋をおそるおそる渡る。屋形船に乗り込む。忘年会の舟は出航だ。