A065-東京下町の情緒100景

東京下町の情緒100景(残照の橋 024)

陽が沈んでしまった。空の明るさが薄らぐ。
 川面が静かに暮れ行く。川の波は色をなくしてきた。一文字の橋では通勤や通学の自転車が行きかう。橋の影が程よく背景の空のなかに溶け込んでいた。

 釣り人がリールを巻き上げ、さおをたたみ引き上げていく。町の拡声器の放送が、子どもたちに時間を教え、帰宅を促す。ウオーキングの夫婦の姿も数をなくしていく。

 
 バスも行先表示に灯火を点す。交番のお巡りさんも入れ替わる。残照の空がさらに薄くなると、一番星が光る。一つ、三つ、七つと、その数はたちまち増す。

 橋上では、切れまもなく自動車の灯りが行きかう。上流から下流へ。その逆もある。景色の変化が忙しなげだ。欄干の灯火が一段と光を増してきた。
 仕事は無事に終わったのだろうか。一息ついた顔で、家路に急ぐ。

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