A065-東京下町の情緒100景

東京下町の情緒100景(釣り人 023)

 釣り人の談義は面白い。
 立ち止まったウオーキングする住民が、何が釣れるのかと聞く。うなぎを狙っていると教える。とたんに、過去の自慢の成果が語られる。

 きょうは獲物が何一つない。バケツは空だし、申し訳ていどに水が入れられている。うなぎは利口らしい。

 成果がないのは、東京湾から川に上がってくる潮が良くないからだの、護岸補強の工事の影響だのと、言い訳もかなり上手だ。

 足を止めた以上は下町の情で、しっかり耳を貸している。
 天然のうなぎは一匹3000円になるという。それも釣れたらの話しだ。ひとりが頃合いを見て、立ち去る。また誰かしらが立ち止まる。

 きょう獲物が取れない講釈が繰り返される。釣り人は時おりリールを巻き、竿を上げてみせる。むろん、うなぎは上手に逃げている。

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