東京下町の情緒100景(鯉とかもめ 022)
更新日:2006年11月14日
学校帰りの高校生が、夕日に顔を染めて橋の欄干から覗き込んでいた。
澱んだ川のなかには、一メートル前後の黒っぽい鯉が泳ぐ。ずいぶん太っている。3、40匹はいるだろう。戯れているように群れている。鯉の背びれが時おり水面をかすめる。
男子学生が手にするパン葛を投げる。
巨きな鯉が餌を豪快に奪いあう。目ざといカモメが啼きながら集団で飛来してきた。水面ぎりぎり低空飛行する。高校生の投げた、パンくずをさっとかすめとった。むさぼった瞬間には大きく旋回する。欄干に近づいたカモメが空中で、パン葛を奪った。器用なものもいる。カモメはいつまでも騒ぎ立てる。
川面にはおとなしい4羽の鴨が泳いでいる。控え目な性格なのか、遠めにみているだけだ。カモメのまわりにはとても近づけず、モジモジしている。気の毒だった。