東京下町の情緒100景(孤独 016)
更新日:2006年11月 6日
人間は孤独が好きだ。都会の喧騒から逃れたい。学校の成績の重圧から解放されたい。静かな場所がほしい。独り静かに、人生を見つめなおしたい。そう考えない人はいないだろう。
荒川の土手はとてつもなく広い河川敷だ。深い芦が茂る、閑散とした情景が上流、下流へと数キロにも及ぶ。静かな川面だが、時おり水鳥が水面を羽ばたく。対岸の浅草方面には数百万人が暮らす。しかし、ここは独りぼっちになれる、だれにも邪魔されない場所だ。
日祝日だけは少年野球やサッカーなどでにぎわう。平日となると朝夕のみならず、日中でも静寂を独り占めできる。大都会の中に、なぜこんな静寂な場所があるのか。そんなことまで考える必要はない。
太陽が自分のために注いでくれる。川風が心のなかを撫でてくれる。つまらないと思った人生がどこか明るく感じられる。下町には、こんな贅沢な場所があるのだ。