下町に似合う花は何かしら。それは朝顔だろう。そんな夫婦連れの会話が聞こえる。
窓に簾(すだれ)がさがる。朝顔が背伸びし、庇まで這い上がっていく。可憐な紫の花を咲かせる。
花弁が朝露に濡れる。ごく自然に風情がかもしだされている。
朝の顔。じっと見つめると、花弁一つひとつに表情がある。
葉陰に隠れたがる子どもの顔、ちょっとマセタ男の子のような花弁。思春期のようなしおらしい表情をみせる乙女の朝顔。
軒下にはちょっとにらみを利かせた大輪の父親。家族を優しく、心あたたかく見守る母親の顔。二つ粒の朝露が光る。それは母の瞳だった。
簾のなかで、家族団欒の爽やかな朝顔一家だ。朝日と戯れる。