A065-東京下町の情緒100景

東京下町の情緒100景 (流行のない街 003)

 下町には昔い風景や風習が残っている。裏を返せば、まったく進歩に鈍感な街なのだ。 昨年、今年、来年。いままで通りの環境をいままでどおり水平に維持している。

 下町に住む住民はそれに慣れきっている。それは過去への単純な順応かもしれない。

 住民たちはサンダル履きで商店街に出かけ、復路は隣近所の家先で、長々と立ち話をしている。それが日常の風景だ。あしたも、きっと変わらないだろう。

 十代の若者たちは進歩を好む。流行から遅れつづける、古い体質の街は好きになれない。過去そのものは苦痛を意味する。それが若さだ。

 若さのもうひとつのの象徴は、現状打破への執念だ。古い体質を嫌う若者は、ときに文化の大胆な破壊者になる。

  しかし、現実はそこまでの勇気を持ち得ない。ひたすら目先の流行を追うことで、進歩を享受するのだ。

 下町でも違和感のある通行人をみかけることがある。その大半が十代だ。少女たちは奇抜な格好で、朝早くから原宿や六本木に出かけていく。

 古い風土を嫌っていた若者も結婚すれば、下町に住みたがるというから不思議な町だ。
 

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