東京下町の情緒100景 (朝の陽は西から昇る 002)
更新日:2006年7月14日
陽が西から昇るといったら、笑う人は多いだろう。葛飾区のど真ん中を流れる中川は、やたら曲がりくねっている。愉快な現象が楽しめる。
下流からでも、上流からでもいい、徒歩で一時間も歩いていると、陽が進行方向の右手に行ったり、左手に行ったする。
川面に輝く太陽は、いのちの源泉だ。右に左にと陽光を横目で見ながら、散策すると面白い。太陽だけではない、夜の星座も、月も同様である。中川は極端な蛇行で、鋭角にも曲っている。
方向感覚の錯覚が楽しめる場所だ。生真面目に、磁石など持ってくると、愚の骨頂だ。
仲間や夫婦と連れ立って楽しむこともできる。「あれっ。太陽が逆から昇っているぞ」と指す。これは結構楽しいものだ。
中流には奥戸橋がある。鉄骨が剥き出しの、ゴツゴツした橋だ。古いから下町の味がしっかり染まっているのだ。
橋上で、立ち止まっていると、ジョギングするひと、早番で出勤するひと、さらには学生までさまざまなひとが橋にやってくる。一日の始まりだ。
夜勤で帰ってくる人もいるから、一概に断定できない。太陽が西から昇るように、朝の陽が一日の終わりかもしれない。そんな雰囲気が下町にはあるのだ。