【寄稿・フォトエッセイ】おばさん観察考=高橋 稔
作者紹介:高橋 稔さん
よみうり日本テレビ文化センター・金町「フォトエッセイ」の受講生です。
一昨年のリタイア後は、エッセイと吹き矢に取り組んでいます。
おばさん観察考 高橋 稔
地元のサークル『スポーツ吹き矢クラブ』に入会してもうすぐ2年になる。私と同様にリタイアした人や主婦など66歳以上の21人が集う。内訳は男性9人、女性が12人。吹き矢人口は全国的にも女性の方が多いらしい。
「スポーツ吹き矢」の知名度は決して高くない。メンバーに入会動機を聞いてみても(始めたきっかけ)は市の広報を見てとか、私のように公開体験会を見学して、やってみたくなったなど、偶然の出会いが多いようだ。
クラブの練習場は広さの関係もあって、7つの的しか設置できない。
他人が練習している間の待機時間が結構ある。その間は後方のイスで待機するしかない。もっともこのサークルは「上手くなるより楽しくやろう」に主眼を置いているので、練習はほどほどで、おしゃべりが楽しくて来ている人も数人はいるようだ。
私は最近、この待ち時間の「おじさん、おばさん観察」が楽しみの一つになった。家では妻という、一人のおばさんとしか接することが出来ないが、ここでの「集団おばさん言動」には新発見や再認識することも多い。
そういう私もれっきとしたおじさんなのだから、時にはわが身を投射しているようで、自己反省する機会でもある。
まず、おばさんたちの会話で多い、その1は〈健康問題〉
「最近、肩や腰が痛くてねぇ」「私は目がすっかりおかしくなっているの」「この頃、胃の調子が悪くて、一度医者に行ってみようかと思っているの」というように自分の不調な部分を説明する。時には「あなたはまだいい方よ。私の症状はもっとひどいわ」と病気比べで重症を争っている。若い時には余り聞かなかった会話が延々と続く。
でも、なぜか調子が悪いくせに楽しそうなのだ。心理的な不安があるから不健康を主張し合うのだろうが、心の中では「まだ大丈夫だろう」という気持ちもあるはずだ。これがもしも重病だったら「検査して、肺がんが見つかったよ。がんは結構大きいらしい」などと悠長な説明をしている場合ではない。
不健康を喧伝するのも、きっとストレス解消なのだろう。