【孔雀船81号より転載 詩】晴れた日にこそ、恋せよ乙女=望月苑巳
望月苑巳さん:日本ペンクラブ会報委員会の副委員長です。現在はジャーナリスト、詩人、映画評論家として活躍されています。
「孔雀船81号」頒価700円(2013年1月15日発行)より転載
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳
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晴れた日にこそ、恋せよ乙女 望月苑巳
いきなり空の群青を吸い込んで
現れた君がスカートを翻し
目の前でとんぼ返り。
いつ吸い込んでも気持ちがいいねと
澄み切った空を弄びながら
明日へ見事な宙返りするのだ。
恋せよ乙女
ヌルリと陽の手に撫でられ
面食らったぼくは
慌てて情熱玉を吐き出してしまった
いつか君に告白しようと隠していたやつだ。
それはコロンと転がって
非情にも足元でウルウルしている。
──危ないな、そんなことしたら空に穴があくじゃないか
突然現れた警備員のオジサンに叱られた
──これだから近頃の若いモンは困るんだ
行儀作法を知らなくて、と嘆き
顔を玉石混交にしてしかめる。
その間に君はまたとんぼ返り
人混みを隠れ蓑にして
サヨナラも言わずに消えた。
それにしても、吸いこんだ青空をいつ吐きだしたのか。
恋せよ乙女
雲を掃除して陽が丸坊主になって
スミマセン、お騒がせしました、もうしません
座椅子のようにぼくが縮こまっていると
階下からバーゲンセールの喧騒な声が。
──あのオバサンたちも整理整頓せにゃならんな
ぶつくさと警備員のオジサンが猫背を見せた
雲の上で揚げひばりが息抜きをしているので
もんどりうって
ぼくは恋せよ乙女と、呟くしかなかった