【寄稿 写真エッセイ】いざ、モロッコへ≪サハラ砂漠を行く≫=岩月和子
ふしぎ物体を発見
旅の6日目は、旅のハイライトである、サハラ砂漠だ。アフリカ大陸北部に位置し、地球上では最も広く、乾燥した大地である。
東西5600㎞.南北1700㎞、面積は1000万平方㎞である。アメリカ合衆国に匹敵し、アフリカ大陸の1/3を占めている。
サハラの意味は、“砂漠、不毛,荒野”である。空から見る砂の大地には圧倒された。飛べども、飛べども、なおも砂漠が続く。永遠に続く気がした。機中から、外をながめていた。
突然、不思議な地形を発見する。地上にCDディスクみたいなものが、いろんな場所に、点々と並んでいるではないか? キャビンアテンダント(CA)に聞く。
「あれは何ですか」
「何でしょうねえ。私もわからないので。聞いてみますね」
CAが何回か、そばを通るが、私の質問を無視しているかのように、素通りする。早く知りたいとイライラしながらも、待つこと約30分だった。やっと、そばに来て、
「あれは、水をためているそうですよ」
「何だって水溜め?」
一応お礼を言ったものの、実に不可解だ。
「なんで、あんな同じ円ばん形をしているのよ。砂漠にそんなにも雨がふるかしら」
となぞは深まるばかりだ。
「何のために、水をためているの?人家はあまりないようだしなあ」
と疑問が次々とわいてくる。完璧にみんな同じ形なのだ。不思議だ。現在も、なぞのままである。宇宙人が作っているのではないのか、という疑問すらわいてきた。
ラクダでサハラ砂漠へ
真っ暗な中、4時半ごろから4WDで、砂漠まで60㎞の道を、進む。道は舗装されており、ゆれは少ない。ついに到着だ。同じような車が40-50台は駐車していた。
こんなにも観光客が多いのかとびっくりした。外はまだ暗い。
突然、ラクダが目の前に、しずしずと登場する。やっぱりでっかいなあ。一人のラクダ使いの人が、5頭をひっぱっていくらしい。
大丈夫かなとちょっと心配になる。はじめに、乗り方とその後、何がおこるかという説明を受ける。その場で、ラクダは両足を折りたたんで、行儀よく座っている。
乗り手は、まず自分の足を鞍にひっかけて乗る。するとラクダが前足から、立ち上がる。その時、乗っている人の体が後ろにのけぞるので、手綱をしっかり持つようにと指示されている。
次は、後ろ足。今度は、前のめりになる。
「大丈夫か?」と、ちょっと心配になってきた。何とか無事乗れた。思ったよりずっと高い。
「お尻がちょっと痛いなあ。快適なポジションに体を動かすのもむつかしいし」
まだ、外は真っ暗だ。いよいよ5頭が連なり、砂漠へと出発する。
“月の砂漠をはるばると、みんな並んで行きました”という歌詞が自然に浮かんでくる光景である。ひとつ実感したのは、そんなにロマンティックな快感などなく、お尻は痛く、体勢は定まらない。
おっかなびっくりで、キャラバンはスタートした。
このさき砂漠の日の出とは、素敵だなと胸が期待でふくらむ。
月明かりの中、別のたくさんのキャラバン隊も行進している。絵になる光景だ。40分ほどで、頂上近くへ到着する。そこから、20メートルほどは自分の足で、砂鉄いろの大地を登らなければならない。
一歩、踏み出す。ずぼっ、ずぼっと、足が砂の中に入りこむ。
う~ん、これが砂漠かと実感した瞬間だ。一歩、一歩ふみしめながら、登る。やっと頂上に到着した。ラクダ使いがのせていた敷物を、おろして、砂の上に敷いてくれる。
その上に座り、みんなで、日の出の方向を向いて待つ。突然、砂がびゅうびゅうと顔にあたりはじめた。これが砂嵐だそうだ。参ったなあと辛坊強く待つこと30分以上である。
ますます激しくなる。目がいたい、顔がいたい。
「どうなるんじゃ」という気分だった。
ガイドさんが、「反対方向を向いてください」と、指示する。
この方がずっと楽だ。背中にあたる砂は比較にならないくらい、楽ちんだ。
ラクダ使いの人たちは、嵐を気にする風もなく、三々五々、のんびりと砂の上でねそべっている。その中の一人が、親切に私の頭にスカーフをまいてくれた。
ベルベル巻きという。ちょっぴり、現地人になった雰囲気を味わった。しっかりと頭にまきつけた。現地の人々は、みんなベルベル巻きをしている。砂漠では不可欠なものだと実感する。
写真:砂嵐の中で、寝そべるラクダ使い
あちこちで写真を撮る人もいる。わたしも記念にと2~3枚急いで撮り、すぐにバックにしまう。
出発前に、ガイドさんから、「砂漠で写真を撮るときは、袋に入れるか、ともかく、砂が入らないように気を付けてください。毎回カメラが動かなくなる人が、2ー3人でます」
そろそろ、身体が砂に耐えられなくなりそうだった。
「今日は、砂嵐のようです。日の出はあきらめてください」
と情け容赦のない打ち切りの説明が、とんできた。ガイドさんも初めてのことらしい。日の出は見られなかったが、ここでしか体験できない砂嵐を肌で感じた。
往路は、真っ暗やみだったが、復路は空が、少ししらみかけていた。
ラクダの姿もよく見える。風は相変わらず、びゅうびゅうと吹いている。ベルベル巻きが飛びそうになった。あわてて、片手でおさえる。
これはやばいという感じだ。その上のフードはとっくにはずれている。やっと下まで、もどってきた。すぐにラクダ使いがお金を集めに来る。
一人、3000円だ。
集めに来た人に渡す。するとその後、また別の人が集金にきた。
「今、渡したけど」
「わたしが、あなたのラクダ使いだ。自分に払ってくれ」
「えっ、だまされたか」と思い、「どの人に渡したかな」と、あちらこちら探す。 幸いにそれらしき人は、すぐ見つかったので、
「お金を、返して。私のラクダを引っ張てくれた人じゃあないでしょう」
と抗議すると意外に、あっさりと返してくれた。
日常茶飯事なんだろう。お金を別グループの人からも、集めると稼ぎが増えるわけだ。客の方もしっかりと、記憶しておくことが大切だ。
帰途、ベルベル人のテントに寄って、ミントティーを頂く。サハラ砂嵐では、砂まみれになったけれど、充実した、濃密な時間だった。
写真:ミントティをサービスする人