寄稿・みんなの作品

紙幣の原料ミツマタ由来のミツバ岳 = 武部実

平成29年3月29日(水) 

参加メンバー:L武部実、栃金正一、佐治ひろみ、中野清子の計4人

コース : 新松田駅 ~ バスで ~ 浅瀬入口 ~ 滝壺橋 ~ ミツバ岳 ~ 権現山(1019m) ~ 二本杉峠 ~ 細川橋 ~ バスで ~ 谷峨駅 ~ 松田駅

 8:25発のバスに乗車し、約50分で浅瀬入口に到着。トンネルを抜けて歩くこと約30分、滝壺橋に着く。ここが登山口だ。

 10:00に出発。杉林を登り始めて40分、樹種が原生林へ変る。このあたりからミツマタがちらほらと見え始めてくる。
 登りなので見上げると花は黄色一色だ。
 しかし登り過ぎて見下ろすと、真っ白な花になるのが面白い。

 歩くこと1時間強で、山頂直下のミツマタの大群生が現れてくる。ミツマタ林の中をくぐり、甘いかぐわしい匂いにうっとりしながら歩くと、標高834mの山頂に着く(11:00)。
 天気が良ければ、ミツマタと富士山の2ショットが撮れるはずだった。だが、残念ながら富士山は雲の中。それでも平日なのに登山者はミツマタを求めて、ツアー客等も含めて4~50人の大賑わいだ。
 丹沢で、人気の山だということがよくわかる。


 ところで、ミツバ岳という山名だが、正しくは大出山(おおだやま)だ。紙幣の原料として植えられたミツマタが、その後は使われないまま成長して、ミツマタ畑(ばたけ)がミツバ岳に変化し、一般化されたということらしい。

 昼食を摂って、11:35権現山に向けて出発。登山道は2~30人の行列で、抜いたり追い抜かれたりの有様である。
 ミツバ岳では残雪少々だったが、途中からは10㎝位の積雪で滑らないように慎重に登る。権現山とは180mの標高差なのに随分と違うものだ。(12:30着)


 12:40に、権現山を出発する。急な下りなので、全員アイゼン装着することにする。私も今年初めてのアイゼンだ。
 こちらのコースは、トレースはついていたが、降りる登山者は少なく我々のパーティー以外は数人だけ。ミツバ岳往復のパーティーが多いようだった。
 30分ほど降ると、ようやく雪がなくなり、アイゼンをはずす。

 二本杉峠からは、普通の整備された登山道を降って、14:30に予定通り細川橋に到着した。
 ここで、地元の人がミツマタの皮を剥いで、和紙の原料作りをしているところを見学することができた。
 ミツマタの皮を綺麗にして、苛性ソーダを入れた鍋で煮込むと、和紙を漉く原料になるということだ。山北町ではミツマタで町おこしをする一環として、和紙漉きをしているとのこと。

 体験したい方は山北町に申し込めばできるらしいので、どなたかやってみてはいかがでしょうか。


     ハイキングサークル「すにいかあ倶楽部」会報№213から転載

花咲く芸術的な火打山は、霧のなか = 市田淳子 

期日:2017年7月8日~9日 晴れ

参加メンバー:L武部実、岩淵美枝子、大久保多世子、開田守、市田淳子

コース:上越妙高 → 池の平いもり池 → 笹ヶ峰 → 黒沢池ヒュッテ(泊)→高谷池 → 火打山
→ 高谷池 → 笹ヶ峰 → 妙高高原駅

 梅雨末期の蒸し暑い東京を抜け出して、涼しい山に、と思ったのは大間違いで、登っても登っても蒸し暑く、久々の高い山にはちょっと閉口した。
 バスの運転手さんが、冬の深い雪の話をしてくれて、笹ヶ峰までは登山ではなく観光に来た気分だった。
 登山口から入ると、行けども行けども木の階段が続いた。
 階段の脇に咲く可愛い花や、見た目は爽やかな(しかし、実際は蒸し暑い)ブナ林を眺めながら歩き、途中で昼食にした。キンラン、ササバギンラン、タニウツギ、ギンリョウソウが生えた、いわゆる低山の趣だ。

 しかし、十二曲がりを過ぎて標高1800mほどになると、残雪が現れた。アイゼンをつけるほどではないが、歩きにくい。しかも、ブヨのような小さな虫が顔の周りを飛び回っている。

 この頃になると、深山の植物から高山植物に変わる。サンカヨウ、キヌガサソウ、ハクサンチドリ、ミネザクラなど、蒸し暑いながらも、花に出会う度、一休みして、黒沢池ヒュッテに近づいたのは、17時を少し過ぎていた。
 広い雪渓から靄が立っていた。
 最後にハクサンコザクラが出迎えてくれて、ヒュッテに到着。まもなく夕食となった。ヒュッテの従業員はユニークだ。
 カナダ人、ネパール人に日本人の大学生。夕食のメニューはネパールカレーだった。消灯は20時。ユニークなドーム型の山小屋で、階段を登ってドームの頂上で就寝。夜中にトイレには絶対に行きたくない構造だ。


 次の日の朝食は5時ということで、席に着くと、メニューは厚めのクレープだった。
「クレープは無限に焼けるよ。」
 と言う。
 小麦粉大好きな私にとっては最高の朝食! 朝食を済ませ、出発の準備ができたのは、6時少し前。すぐに出発することにした。

 高谷池ヒュッテを通り、天狗の庭に出ると、ミズバショウ、イワイチョウが咲いていた。ハクサンコザクラの群落は見事だったし、火打山と雪のコントラストが天狗の庭の池塘に映って、芸術的だった。
 いよいよ、火打山に登る。雪が多く残っているにもかかわらず、蒸し暑いのはなぜ?と思いながら、登った。
 アルプスほど高い山ではないのに、私にとっては結構、大変だった。しかし、ところどころで見せてくれる花たちが、私にとっては最大の救い。これがなかったら、登れないだろう。

 私が火打山の山頂(2462m)に着いた時、360度霧で何も見えなかった。

 少し前は日本海まで見えたという。残念ではあるけれど、山はこんなものだ。人が自然をコントロールするとはできない。むしろ、しない方が自然なこと。もし、パノラマを見たければ、もう一度来ればいいのだ。
 こうして、来た道をひたすら歩いて戻った。登山口にはライチョウ調査のアンケートが待っていた。実は知り合いだということに驚いた。友達の輪が嬉しい。


   ハイキングサークル「すにいかあ倶楽部」会報№215から転載

抱擁の標本/望月苑巳

 さくらのはなびらにじゃれつく猫
 猫の暗闇にぼく
 ぼくの骨格に似た無邪鬼がいる
 とうの昔に夜店で失ったものがそこにある
 柔らかな毛並みを抱くと
 温かいいのちがはらりと
 夢の外へ逃げてゆく
 昨日買った手帳に
 その夢を貼りつける
 抱擁を貼りつける
 喜びの源はぼくの内側にあったと
 その時、気づく
 いのちの回数券が減ってゆくように
 はらり
 はらり
 さくらは散る時、宙で背を向けるだけなのに
 テロメアは
 背を向けないまま
 弟の命日にじゃれついたのか
 これみよがしに
 黙々と目を伏せている散華
 一枚落ちるたびに生を願い
 死を思う
  一枚裏返るたびに
 一歳、歳をとり
 一歳若返る気がする
 その弥生は
 人を狂わせるだけに存在するようだ
 夢の外の闇だまりにはまりこんで
 またさくらと、ダンスに興じている 猫が
 腕の中でチコンと標本になっているので
 ぼくはつるりと泣きだしてしまう


  *テロメア=命の回数券とよばれる。染色体の先端にあり、細胞分裂を繰り返すたびにこの部分は短くなって、死んでゆく。


        イラスト:Googleイラスト・フリーより

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孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。

「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
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〒185-0031
東京都国分寺市富士本1-11-40
TEL&FAX 042(577)0738

【孔雀船より】 剛太郎 ラップミュージック・フリースタイル

お袋なんてくそくらえ
俺がどう生きようと俺の自由 
俺の人生
明日は明日の風が吹く
明日は明日の陽が昇る
あっちにぺこぺここっちでへいへい
仕事仕事とで骨身すり減らし
気がつきゃ爺(じじい)なんてまっぴらごめん 


剛太郎は今日ものりのりで歌っている 
ご近所迷惑犬の遠吠えもなんのその
憲兵に連れて行かれるわけでもなく
刑務所に閉じこめられるわけでもなく

世間なんてなんぼのものじゃ
俺に金をくれるじゃなし
食い物くれるじゃなし
朝から晩まで汗水たらし冷や汗かいて
ホームレスって生き方もあるんだぜ
野垂れ死なんてのもなかなかイカシテルじゃねえか 


剛太郎は夜中から明け方まで
息もたえだえ
青息吐息でギブソンのギター・レスポールをかきならし
思想犯としてマークもされず
天井から逆さ吊りにもされず


しょせん人は孤独なんだよ
旅先だろうと戦場だろうと
死ぬ時ゃ一人ぼっちさ誰だって
生きるか死ぬかなんて
時の運天のさだめ
人生はきまぐれ出たとこ勝負 


剛太郎は溺れかかっているのだろうか
すきっ腹のはずはないし 
首も吹っ飛ばされていないのに
あんなに叫びがなりたて 
あんなに手脚をふりまわし


ごぎぶり一匹も殺せぬいくじなし
蜘蛛の子さえ逃がしてやる浪漫派
得体のしれぬ何かにがんじがらめにされると
怯えているのだろうか

                 
           イラスト:Googleイラスト・フリーより


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【寄稿・孔雀船】 月が欠ける前にペンギンが囁くこと  望月苑巳

 あなたはペンギンの抱擁を見たことがありますか。
 
   ある日母が解体した
   時間は罠であり
   謎の病だと知って
   月が欠ける前に
   ぼくは骨を食べことにした
   焼きあがったばかりの
   母の骨を食べる
   感謝しながらうっとりと
   カリカリ、シャリシャリと
   時々泣きながら気晴らしに遠吠えもしてみる
   すると妻が走ってきてやめろという。

 僕は見たのです。
「ダンスの時間」という映画の中で、たがいに体を預けあってうっとりと目を閉じ、無我の境地に達しているその生物を。ぴったりとくっついたそのからだの隙間には、どんなえらい神様も入り込む余地などありませんでした。
 完全無垢な天地創造の原理もそこには意味がないというように、未来永劫書き変えられない過去がありました。そのとき、こちらの気配に気づいたのか、半開きになったペンギンの目が、「人間にだってできるんだよ」と笑っているようでした。

   妻は骨をひったくると
   ぼくの首を絞める
   ぼくは母の骨の心臓を吐き出してうっとり
   食べながらうっとり
   吐きながらうっとり
   どちらが本当の気持ちなのだろう
   欠けはじめた満月が鎌になり
   ぼくの首を斬り落とそうとしている。


イラスト:Googleイラスト・フリーより

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【寄稿・(孔雀船)より】 どこですか 坂多瑩子

こんなもん
といったらどんなもんといわれた
その相手が長靴をはいたネコだと
つぶやいたら
靄がたちこめて まわりが見えづらくなったけど
それから青空になって
夜がこない
乗り慣れた電車に乗っても見慣れない風景がひろがり
終点で降りたら
電車はさっさかどこかに行ってしまった
橋を渡ると
店があるからガラス戸をあけると
クレンザーにネギに
木綿豆腐に
スコップがたてかけてあった

親戚いっぱい 家族いっぱい
いっぱいはいらないとカミサマにお願いしたのは
いつのことだっけ

あっ違う

だれもいないから
お金持ちのおじさんとか
やさしいお父さんにお母さん
ほしいほしいとカミサマにお願いしたのは
いつのことだっけ

長靴をはいたネコの洋服がぼろぼろ
あたしのセーターもほつれてきた
ー駅はどこですか
山のむこうと教えてくれた
山のむこうを見ても山しかない

イラスト:Googleイラスト・フリーより

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【寄稿・(孔雀船)より】 七夕の夜、ある抱擁についての考察 望月苑巳

偽善たっぷりの
七月の抱擁をほどくと
想い出もほぐれてしまう
織姫と彦星はそそくさと背を向けあった
つかの間の逢瀬も
些細な嫉妬から誤解が生じるものだし
億年続けていれば、そりゃあ誰でも飽きるというものさ

二人の仲の懸け橋だった銀河の水も冷え切って、ジャブジャブと億光年先にまでこぼれた。四月にはさくらを省き、四月のいのちを省き、日本の四月のさくらのいのちを省いたせいで、こうして朝から忙しい一日が始まった。

「この世界はどうしてこんなに息が詰まるのか」
まるで人生って
溜息からできているみたいだと
牛を追いながら彦星が嘆いた
二人の仲を取り持った
白鳥座が恨まれた
傍観していた蛇つかいは
蛇を逃がしてしまったとこぶしを上げている
そのせいで水瓶座の水がこぼれて
織姫は着物の裾を濡らしたが笑顔は絶やさなかった
「息苦しいのは他人の顔色ばかり窺って生きているからよ
溜息は希望のかけらだと思ってごらんなさい」

織姫よ、彦星よ、そんなさくらを省いた日のことを覚えているか。いのちを省いた日を思い出してみるか。どんな小さな溜息でも、するだけの理由があるのだよ。
抱擁もまた同じ、してみるだけの価値があるのだよ。億年の、また億年先に続いていても、その価値は偽善さえ飲み込んで、七夕の、真実という繭にくるまれてしまうのだよ。

繭の眠りから覚めたら、また抱擁をするがいい
きっと新しい永遠が始まる。


イラスト:Googleイラスト・フリーより

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【寄稿・孔雀船より】 ORIENT CAVE 平岡 けいこ

人が死ぬのに理由などいるだろうか
あなたはいない
この世界のどこにも存在しないのだ
雲ひとつない澄んだ空
こんなにも美しい世界を
あなたと見ることが叶わないのだ


十億年かけてできたオリエントケイブ
「全てはイメージなんですよ。」
マットさんが日本語で説明する
瞳をこらしても確認できない
あなたの本質
様々な人たちの勝手な思い出に歪められてゆく
わたしたちはただ空気のように
いて いる ことが当たり前だった

「一センチ伸びるのに百年かかるんですよ。」
この鍾乳洞の先のほんの一センチが
わたしたちの一生より長いことを
祝福すべきだろうか
鍾乳洞の中は一律十五度で無風
外ほど寒くはない

空気が薄いというが
あなたを失って常に呼吸困難なわたしには
たいした苦しみではない
「最初にインドに行ってエジプトに行って
 ぼくらは三つの国旅行するんですよ。」

あとひとつの国が思い出せない
忘却はやさしいから
わたしはぼんやりしている
全てはイメージにすぎない
あなたが産まれたこと
長い歳月をかけて
記憶と経験を重ねたこと
わたしが得たもの 失って得たもの
漆黒より暗い洞窟の中で
鍾乳洞はさまざまに形作られ
自然が十億年かけて造り上げた
乳白色の彫刻に感嘆する
美しさに意味はないが
形作られる過程には必然がある

水が滴っている
乳白色の鍾乳洞をしっとり
時間をかけて落ちてゆく
それは儚い命の光に似ている
わたしが生き残ったことに理由などない
ただここにいて 明日もいるとは限らない
全てはイメージにすぎないのだ


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【寄稿・(孔雀船)より】  刮ぐ 吉本洋子

夕食の牛蒡を刮ぐ
包丁の背を当てて薄く皮を刮いでいく
踵の角質を削る
薄刃の剃刀を固くなったそれに添わせ削っていく
大切なものは皮と身の僅かな隙間に潜んでいるものを
刮ぎ 削り 剥ぎ 晒し
いっそ皮など刮がずに丸ごと喰えばよいものを
いっそ踵ごと削り落としてしまえばよいものを
灰かぶり姫の意地悪な姉のように
今夜の牛蒡のきんぴらは美味しい
むかし話は真実で美味しい
深夜 身体の至る所が意固地な生き物に


夜更かしをする
林檎の皮を剥く
騙されている気がする
赤く生る実の中の実は赤くなくちゃ 
せめてしらしらした薄い血の色に似た実でなくちゃ
よく研がれたナイフで
指と指と指の間の皮を剥く
血は一滴もこぼしてはならぬ
実に実の色以外の実を見せてはならない
剥かれた皮は薄いほど残される実は美しい


嫌がる子供達のために
下処理は済ませたけれどまだ血生臭い
定年退職をした男が親族から
祝いごとめいて喰われる小説を読んだことがある
一番大事な部位は冷蔵庫にと小姑から囁かれていた
それを喰らうのは妻の証
食感を楽しんでと意味ありげに片目を瞑る
牛乳に漬けると臭みが消えるとレシピに書いてあった
カレー粉をまぶして油で揚げる
鉄分補給には一番 
学校給食にもよく出るわ
放課後のチャイムが鳴り終われば
妻の証をやすりに掛ける
なめらかにすべらかに柔らかな生き物に


             イラスト:Googleイラスト・フリーより

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【寄稿・(孔雀船)より】 吉野山の桜  藤井雅人

渇えた腕のような枝を支えながら

木々は待っていた その時を

なにかが湧きあがりつつあった

ひそかにめぐる 地底の水の廻廊から

それは ただの一瞬



有限が無限に逢うのは いつも一刹那

太虚へ駆けのぼるいのちの過剰が

山を埋めつくす 桜花のすがたで


無限と斬りむすぶいのちを眺めながら

ひとはわらい そして泣く

ひとの感受の容れ物は あまりに小さく

無限は 哄笑か号泣となって

そこからあふれ出る


喜びも嘆きも のみこまれる

開花と落花の 慌しい宴のなかに

そして ひとはまた待ちうける

永劫をわたる 桜色の大河が

また山に浮かびあがる時を


吉野山の桜  藤井雅人 PDF 縦書き


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