A040-寄稿・みんなの作品

【孔雀船105号 詩】この夏 吉本洋子

夏を見ていた
庭のレモングラスが焼け焦げて
ただの茅にかえって
うな垂れて
この夏はあの夏に

あの夏
お前が押せよ
嫌だよ お前が押せよ
一列に並んだ物の怪めいた人間の列が
声を掛け合っている
血を吐くほどの声だったろうか
崩れるほどの引きつった顔だったろうか
人間だから

植木にmiziyari.jpg今年の夏は水遣りが間に合わなくて
気に入りの鉢を幾つも枯らしてしまった
私の怠惰が大事なものを失わせる
命を繋ぐ一番当たり前の事柄を
いとも簡単に後回しにした
この夏
刑務官の忌避するスイッチは4つ
自分ではなかったという免罪符の揺れ幅が
笑えるくらい貧しい

あの年のあの夏
そのスイッチは幾つ並んでいたのか
どんな目くらましで
人間だったら押せないそれを
カモフラージュしたのか
人間だったら押せないそれを
人間が押したのかあの夏に


夏を見ていた(吉本).pdf


【関連情報】
 孔雀船は105号の記念号となりました。1971年創刊です。
「孔雀船」頒価700円
  発行所 孔雀船詩社編集室
  発行責任者:望月苑巳

 〒185-0031
  東京都国分寺市富士本1-11-40
  TEL&FAX 042(577)0738
  メール teikakyou@jcom.home.ne.jp

イラスト:Googleイラスト・フリーより

「寄稿・みんなの作品」トップへ戻る

ジャーナリスト
小説家
カメラマン
登山家
わたしの歴史観 世界観、オピニオン(短評 道すじ、人生観)
「幕末藝州広島藩研究会」広報室だより
歴史の旅・真実とロマンをもとめて
元気100教室 エッセイ・オピニオン
寄稿・みんなの作品
かつしかPPクラブ
インフォメーション
フクシマ(小説)・浜通り取材ノート
3.11(小説)取材ノート
東京下町の情緒100景
TOKYO美人と、東京100ストーリー
ランナー
リンク集