A040-寄稿・みんなの作品

【孔雀船104号 詩】 北斎遊泳  高島清子

盆が近い夜であった

六粒(むっつぶ)団子を作っておくれ
迎えに来る足音が聞こえるから

そう言ったのは私の知らない母の母である
霊感というものが母に少しはあったらしく
盆が近づくとその話が出た
  
いま裏の野原に行ってきて
ああせいせいとしたよ

私の幼年の夢では
いつでも地面を軽くひと蹴りすると
空に逃げることができた

もう一人空を飛んだ人がいた

人魂で行く気散じや夏の原    ( 北斎 )
神奈川沖波裏 -北斎.jpeg  
神奈川沖波裏の人が
この世に置いていった言葉のよろしさ

人魂ドローンが気ままに空を行き交う今では
北斎のセンスも少し霞む

私の七月は生と死が行き交う月だ
あの世とこの世の回転ドアを
うっかり押したせいで
行ってしまったか
来てしまったか

六粒団子は六道の辻に置くものである
それぞれが訳あつて
満天の星空が暮れていく

北斎(高島.PDF=縦書きで読めます

【関連情報】
 孔雀船は104号の記念号となりました。1971年創刊です。
「孔雀船」頒価700円
  発行所 孔雀船詩社編集室
  発行責任者:望月苑巳

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  東京都国分寺市富士本1-11-40
  TEL&FAX 042(577)0738
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イラスト:Googleイラスト・フリーより


                       
                                                   

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