【孔雀船104号 詩】 北斎遊泳 高島清子
更新日:2024年9月22日
盆が近い夜であった
六粒(むっつぶ)団子を作っておくれ
迎えに来る足音が聞こえるから
そう言ったのは私の知らない母の母である
霊感というものが母に少しはあったらしく
盆が近づくとその話が出た
いま裏の野原に行ってきて
ああせいせいとしたよ
私の幼年の夢では
いつでも地面を軽くひと蹴りすると
空に逃げることができた
もう一人空を飛んだ人がいた
人魂で行く気散じや夏の原 ( 北斎 )
神奈川沖波裏の人が
この世に置いていった言葉のよろしさ
人魂ドローンが気ままに空を行き交う今では
北斎のセンスも少し霞む
私の七月は生と死が行き交う月だ
あの世とこの世の回転ドアを
うっかり押したせいで
行ってしまったか
来てしまったか
六粒団子は六道の辻に置くものである
それぞれが訳あつて
満天の星空が暮れていく
【関連情報】
孔雀船は104号の記念号となりました。1971年創刊です。
「孔雀船」頒価700円
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