A040-寄稿・みんなの作品

【孔雀船104号 詩】 あたしはカラス  三井 喬子

公園の カラス
ゴミ籠が設置されているが すぐに満杯になる
食べ残しのパンや
飲み残しのジュース
ポリ袋 上手にめくって朝ごはんだ
カラス イラスト.jpg
あたしは カラス
裏山の カラス
朝に鳴き
夜に鳴き
誕生した新しい命を寿ぎ 死者を弔う

あたしは カラス
深山の カラス
内気な カラス
あたしたちが人間とつるみたがるのは
飛翔高度が問題なのではなく
食物の多寡と 鷹の脅威から逃れるためだ

おお あたしはカラスなのだ
時に 生意気な赤ん坊や婆さんを襲うこともあるが
虫であれ 果物であれ
油まみれの袋であれ
つつけば旨いこともある

おお あたしは
忌避されるカラスである
時に慕われ 時には唾棄される
漆黒のカラスである
ベンチの年寄りがステッキを振るが
お前の方が先に死ぬんだよ
分かってるのかあ

おお カラス
それはあたしの名前である
あたしたちの名前である
カラスの髪は緑の黒髪
この世の海辺に 揺らめいている

おお カラス
あたしの名前を呼ばないで

磯嘆きして

死別
引き裂かれてなお
飛べ!


あたしはカラス 三井 喬子.pdf=縦書きで読めます

【関連情報】
 孔雀船は104号の記念号となりました。1971年創刊です。
「孔雀船」頒価700円
  発行所 孔雀船詩社編集室
  発行責任者:望月苑巳

 〒185-0031
  東京都国分寺市富士本1-11-40
  TEL&FAX 042(577)0738
  メール teikakyou@jcom.home.ne.jp


イラスト:Googleイラスト・フリーより

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