【孔雀船104号 詩】 あたしはカラス 三井 喬子
更新日:2024年9月22日
公園の カラス
ゴミ籠が設置されているが すぐに満杯になる
食べ残しのパンや
飲み残しのジュース
ポリ袋 上手にめくって朝ごはんだ
あたしは カラス
裏山の カラス
朝に鳴き
夜に鳴き
誕生した新しい命を寿ぎ 死者を弔う
あたしは カラス
深山の カラス
内気な カラス
あたしたちが人間とつるみたがるのは
飛翔高度が問題なのではなく
食物の多寡と 鷹の脅威から逃れるためだ
おお あたしはカラスなのだ
時に 生意気な赤ん坊や婆さんを襲うこともあるが
虫であれ 果物であれ
油まみれの袋であれ
つつけば旨いこともある
おお あたしは
忌避されるカラスである
時に慕われ 時には唾棄される
漆黒のカラスである
ベンチの年寄りがステッキを振るが
お前の方が先に死ぬんだよ
分かってるのかあ
おお カラス
それはあたしの名前である
あたしたちの名前である
カラスの髪は緑の黒髪
この世の海辺に 揺らめいている
おお カラス
あたしの名前を呼ばないで
磯嘆きして
潮
死別
引き裂かれてなお
飛べ!
【関連情報】
孔雀船は104号の記念号となりました。1971年創刊です。
「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳
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