作者の書籍案内『180日家族 大森美雪・17歳』=越善夏楓
『家族とは何か? 人と人との繋がりとは何か?』
それをテーマにした小説です。
よく言われる話なのですが、『人間裸一貫で生まれ、裸一貫で死んでいく。しかも一人ぼっちで』というのがあります。
あまりにも寂しい話なので、私を含めて、ほとんどの人は、普段それを意識しないで過ごしているのではないでしょうか? ちょっとだけ、それを見詰めてみませんか? という思いを込めて、この本を書かせて頂きました。
帯の後面には、
『人間である限り、共に人生を歩んできた友人や知人とは、いずれ別れなければならない運命にある。いやが応でも、ある一定の時期が来れば、それぞれ違う人生を歩み始めなければならない。そもそも、共に人生を歩んでいると思っていること自体が間違いで、もともと人間とは、一人ぼっちで自分だけの人生を歩まねばならぬ寂しい生きものなのかも知れない――出会いと別れを繰り返しながら――』
とあるのですが、そんな感じの小説です。
いきなり冒頭でこんなことを書くと、人生論をとつとつと語った、重苦しい内容だと思われてしまうかもしれませんが、さにあらず。全体的に、ユーモア溢れる小説にさせて頂きました。
特に、主人公の大森美雪と父の春雄とのトークバトルは、思わず笑って頂けるように、工夫を凝らしています。更には、主人公の母との葛藤や卓球部での活躍、幼馴染の男の子とのチョッピリせつない恋物語……、など内容も盛りだくさんです。
作品の『あらすじ』を紹介させて頂きます。
5月のある日。高校2年生の大森美雪が部活を終えて帰宅すると、10年前に家を出て行った母が、突然家に戻って来ていた。
父親の春雄が、娘の美雪に何の相談もなく勝手に家に連れてきたのだ。美雪にとって、それは絶対に許せない行為だった。
母の美恵子は自分と父を捨て、別の男と暮らすために、家を出て行ったのだ。そんな母親を、なぜ父が許したのか、美雪には理解できなかった。
初めのうち、美雪は母親が作った食事も取らず、話さえも拒否をした。精神状態はボロボロになり、勉強も部活も手に付かなくなってしまう。しかし、親友の岩永小百合や、卓球部の先輩の小早川玲子や野上瞳、さらには生徒会長の磯辺貴文等の数々の助言により、美雪は少しずつではあるが落ち着きを取り戻していく。
やがて季節は夏になり、東部予選の日がやってきた。
試合のさなか、応援に来てくれた母親のアドバイスのおかげで、美雪は県大会の個人戦に出場できることが決まった。そのことがきっかけとなり、美雪の心は母親を許す方向に大きく傾いていった。
ところが、その矢先。腹痛を起した美雪は、病院へ行けと強く迫る母と衝突してしまう。母親面をして意見してくる母に、一度自分を捨てたくせに、という思いを抑えきれなくなってしまったのだ。
そんなこんなで、一進一退を繰り返しながらも、時が経つに連れて、やはり血を分けた親子ということもあり、母親との関係は徐々にではあるが改善されて行った。
母が戻ってきてから、おおよそ半年経ったある日、3人は家族旅行に出かけた。その最中に、美雪は母を許すと、ようやく言葉に出して告げたのだった。和解した事で、これから普通の家族3人での幸せな暮らしが始まると、期待した美雪だったが……。
許した母との関係は、その後どうなったのか? なぜ父は母を許したのか? 結末はどうなるのか?
本書で続きを読んで頂ければ幸いです。
2014年5月15日発行
【関連情報】
書籍名 180日家族 大森美雪・17歳
作者 越善夏楓
出版社 文芸社
文庫 346ページ
定価 本体700円+税
ISBN 978-4-286-14894-6
C0093 ¥700E