A040-寄稿・みんなの作品

【寄稿・フォトエッセイ】 地球儀=久保田雅子

【作者紹介】

 久保田雅子さん:インテリア・デザイナー。長期にフランス滞在の経験があります。(作者のHPでは海外と日本のさまざまな対比を紹介)。
 周辺の社会問題にも目を向けた、幅広いエッセイを書いています。

「週末には葉山の夕日と富士山を狙っています」。その写真は毎月、ブログの巻頭・巻末で紹介されています。心の憩いになります。

         作者のHP:歳時記 季節と暦の光と風・湘南の海から

    地球儀    久保田雅子    

 わが家の子供たちが小学生のころ、クリスマスプレゼントに地球儀を贈った。
 広い世界を知る素敵なプレゼントだと思ったのだが、かなり不評でがっかりした。子供部屋の棚の上に長いこと置いてあったが、まったく使わない様子を見て、とうとうある日処分した。そのころの私はゆっくり地球儀を見る時間などなく、毎日をあわただしく過ごしていた。

 先日、娘に「誕生日プレゼントになにか欲しいものある?」と聞かれたのですぐに<地球儀>を希望した。最近、地図帳をみていて、シベリアや北極付近などが、ほんとうはどんな形なのか知りたくなっていたからだ。地図帳では赤道付近は正しいが北極や南極に近づくほど、その形は不正確になってしまう。それも目で確かめたかった。
 
 希望した地球儀が誕生日に届いた。さっそく箱から出してデスクに置いてみる。直径30センチぐらいのベージュ色系のおしゃれな地球儀だ。
 斜めに傾いた地球を見て、この斜めは地図帳ではわからないことだと気付いた。23,4度の傾きで、なぜ地球に四季があるのかを、再確認できた。
(そうか…)誰でも知っていることなのに、私はよく理解していなかった…。


 フランス行きの飛行機に乗ると、座席のポケットに入っている小冊子には、飛行経路の地図が載っている。機内のテレビ画面には飛行経路が映しだされて、現在どのあたりを飛行中かわかるようになっている。東京を出発するとすぐに北へ向かい、ロシアの上空を西へ飛行して行く。フィンランド付近からドイツを通ってフランスへ下りていく。その都度(なぜ遠回りするのかな、中国上空を西へまっすぐ行けば、フランスはもっと近いはずなのに…)と思っていた。


 だが、地球儀を手にしておどろいた。東京・パリを直線で結ぶとロシアを通るのだ。中国は通らない。飛行機はちゃんといちばん近いコースを飛んでいたのだ。(地図帳で東京・パリを直線で結ぶと中国を通るのに…)

 地球が丸いことなどすっかり忘れて、気にもとめずに、いつも地図帳で世界各地を確認していた。地図帳の南極大陸のかたちと地球儀の南極は大違いだ。
 円形で、思っていたよりも大きかった。中国とほぼ同じだ。北極点は海だった。
日付変更線が縦に北から南まで一直線ではなかったことも再認識だ。アラスカ付近やニュージーランドの近くではジグザクしている。

 私の地球儀体験のように、手にしてみてその実態がはじめて解って、おどろく事柄がたくさんあるのではないかな、と思った。

「寄稿・みんなの作品」トップへ戻る