【寄稿】原発に絶対の安全はない=石田 貴代司
石田貴代司さん=シニア大樂の「写真エッセイ」の受講生
東京・世田谷区に在住
「アマチュア天文家」として、
同区の地元プラネタリウムが主催する星空観測に出向いています。
原発に絶対の安全はない=石田 貴代司
<原発事故未だ収束せず>
近道するつもりで狭い住宅街を通った。
曲がり角の小さな民家の駐車場兼門扉に立てかけたポスターに近づいてみた。
明日、3月10日と11日に「原発ゼロ☆大行動」を日比谷公園で開催というものである。
「放射性物質が、この瞬間も撒き散らされています。事故は収束していません」
私が気にしていたことが、ずばり書かれていた。
「行かねばならぬ」
私は背中を押された。
<日比谷公園、2つの集まり>
公園内の特設ステージの両脇には、それぞれ100台くらいの太陽光発電パネルが設置され、双方に積み上げられたスピーカーからの大音響が私を迎えてくれた。
「史上最大の“太陽光発電ステージ”大作戦」と掲示されている。
なる程、脱原発だな~。司会者の大声に続いて歌手の加藤登紀子が大拍手と共にステージに登場した。歌とトークで東日本大震災の被害者への追悼集会となった。
南相馬からのご婦人に続いて、陸前高田から商売を再開したという老舗の八木澤商店(醤油屋)の女将さんも登場して、さわやかな口調で体験を話した。少し前に八木沢一家が出演した番組があり、見覚えのある人だ。周囲にはたくさんのみやげ物屋や食べもの屋が並び家族連れも集会を盛り上げている。
<幟旗の大集結>
ステージを離れて、もう一方のグループを追った。公園内の有名なレストラン「松本楼」に近い道路には、なんと今まで見た事がない幟旗の大軍団がいた。それぞれが所属する社名や組合、地区の名前が書かれた色鮮やか幟をもった集団が、デモに出る前の隊形を作っている。
「反原発運動」は忘れられたのだろうか、と懸念していた私の気持に勇気をくれた。
幟旗を持った人に聞いてみた。間隔を取りながら、「東電本社前」を目指すという。この流れに付こうと決めてカメラを握りしめた。
<隠蔽された数々の情報>
民家の張り紙の話題に戻ろう。前政権で野田総理が明言した「事故は収束した」は、有名になった言葉だ。そして、今では誰もが嘘だと知っている。
2011年3月の原発事故後の政府広報や国民をパニックに追い込まないため? の嘘を一杯垂れ流してきた。今現在も東電は福島第一原発内での作業員事故やトラブルや作業員の雇い入れ等でも隠蔽をしている。そしてボロが出始めている。
福島で採れた米や野菜を埼玉県に回し、埼玉産と偽って販売したと新聞で見た。こんなことが、「風評被害」という言葉が未だになくならない原因だろう。国や天下の東電さえ軽々と嘘をまきちらすから。
<放射線量測定器を一家に一台>
(1) ‘13年2月15日(金)世田谷区が公募した講演会「低線量被ばくの影響」の抽選に応募当選した。 講師は黒部信一医師(慶応医学部OB)だった。最後の質問時間では、赤ん坊をおんぶした婦人が立った。
「私は2児の母で、小児外科医です。話に出た子どもの甲状腺がんの兆候は、どのくらいで、顕在化するのでしょう。私は世田谷区役所に近いところに住んでいて、ガイガーカウンターで計ると、0.13マイクロシーベルトです。移住を検討しているので・・」
それに対し、医師は「あと4年くらいで兆候が出ると思います。0.13とは意外に高い数値ですね」。医師とはいえ、小児の健康を考える、しっかりした母親はいる、と感心した。
(2) 3月12日毎日新聞が小さく伝えたが、東電は福島第一原発2号機にある窓を急遽閉めた。
知っていたことだが、この2号機は1月に異常な温度上昇をしている。原因は2月に発表すると言っておきながら、逆に「非公開」にしてしまった。
毎時200万ベクレル(1日あたり4800万ベクレルの放射線が放出されている。しかも3月4日(月)から「温度情報」が隠蔽されている。
(3) 3月12日放送のNHKスペシャル「メルトダウン」によると、福島第一原発で一日400トンの汚染水が漏れている。(プール約1杯分)、隣接地には900個(高さ10m)のタンクがこの汚染水備蓄用に設置されているが、もう置く余地が少なくなっている。
<東京からの避難も考える>
こんなタイトルにはしたくないが、放射線は目に見えず、臭いもなく、私たちは既にたっぷり浴びてしまっているかも知れない。市販の読み物でもたくさんの識者が、これを訴えている。さらには「東京に住めるのはあと3年くらいだ」と唱える人もいる。被災地以外の人は、のんびりしているが、国や自治体の指示待ちの姿勢だろうか? 多分、指示しないぜ。
どうするかは、自分で決断するしかない。
<それでも脱原発の推進を>
上記のNHKスペシャルを見た人は全員が感じたでしょう。事故発生時の事前訓練は1回もしていなかった、そして起こった時の事故対応の未熟さ、無知さに対して誰もが「恐ろしさを覚えた」はずだ。
道は残されている? ドイツは2022年までに廃止を決めた。これにも10~30万人規模のデモの行使を重ねたことを知った。
最近のニュースや新聞記事にも、太陽光発電、風力発電(海上含む)、地熱発電、また原発銀座の若狭湾には、原発頼み脱却のためのLNG基地の建設計画、更に伊勢湾沖の海底から、世界初のメタンハイドレートからガスの取り出しに成功した。少し時間かかるが期待大である。
<東電本社に向かって>
デモ隊について東電本社前に着いた。葛飾区の団体だ。ビルに向かって叫んでもどうかと思うが、これがスタイルなんだろう。
街宣車も来た。見なれた顔の共産党の幹部の小池晃氏が檄を飛ばした。昨‘12年夏の人数より減っているが、火は消えていない。
強敵は原発推進の安倍政権や変なおっさん(石原元都知事談)の経団連たちだ。「人命か経済競争か」どちらを守りますか。
原発に絶対の安全は無いぞ、生命をとられるぞ。 (了)