A040-寄稿・みんなの作品

【寄稿・エッセイ】土筆を摘みに行こう=里山景

【作者紹介】
 里山景(さとやま けい)さんは読売日本テレビ文化センター・金町「公募のエッセイを書こう」の受講生です。エッセイ歴は十年余です。旅エッセイ、日常エッセイを得意としています。

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土筆を摘みに行こう  文・絵 里山景

 友から土筆を摘みに行こう、という誘いの電話があった。
 「えっ、摘んでどうするの」
 「煮て食べるのよ。決まっているでしょう。」
 「食べられるということは、知っているけれど食べたことないわ。」
 
 4月ののどかなある日、東急線「たまプラザー駅」で友達2人と待ち合わせた。駅前は桜並木だ。満開は過ぎて、桜吹雪となって、道路の橋に花びらが積もっていた。

 多摩川の土手あたりで摘むのかと思っていたならば、ある花農家の畑のなかだった。
 「この中にやたらと入っていいの。」
 「ちゃんと断っているから大丈夫よ。それに私はここのお得意さんだから。」
 そういえば彼女から芍薬の花をたくさんもらったことがあった。ここの畑の花だったのだ。

 生えている、生えている。畑一面にツンツンツンと。とる前に友からの注意あり、
 「頭が青いのを選んで取るのよ。白くなって開いているのは硬いからね。」
 「土筆の頭って煙が出るからちょっと、いやよね。」
 「その頭が一番おいしのよ。料理したのを持ってきているから、味見さしてあげる。」
 手のひらに載せてもらう。初めて食べるけど、どんな味がするのかな。ちよっと苦いが意外と美味しい。

 「袴を取ってさっと洗い、油でいためて、酒、みりん、しょうゆで味付けして出来上がり。簡単な料理でしょう。さあ、たくさんつみましょう。」
 足の踏み場もないほど、はえている。青い頭を選びながら、手は早くなる。取るといううことは楽しいことだ。瞬く間にビニール袋はいっぱいになった。
 友の説明がまた始まる。
 
「土筆にかぎらず苦いや辛い植物は活性酸素からの害を減らしてくれる。だから春にふきのとうや山菜を食べるのは、体にいいことなのよ。」
 元小学校の先生だけあって、説明がわかり易い。説明はまだ続く。


 植物は1日中紫外線を浴びているから、自分の身を守るために、苦くなったり、からくなったり、渋くなったり、するそうだ。そして土筆など食べると、老化やがんなどを予防してくれるという。年齢とともに、そういう野菜がすきになってきたようだ。

 川崎市王禅寺あたりは、自然が豊富にあり、里山は新緑のなかに、椿や花桃や八重桜が溶け込んで、美しく、心が洗われるように気持ちがよい1日だった。

 土筆は足が速いから、今日のうちに袴を取って料理したほうがいいと言われていた。夕食後はテレビをみながら、1時間以上かけて袴を取った。あくで爪が黒くなった。
 友に言われたとおりの調味料で味付けして、すぐできあがった。なかなかいい味だ。
長女に食べさせると、粉っぽくて美味しくないといった。次女に聞いたら美味しいとパクパクたべた。夫に勧めたらみるなり、「雑草なんか食べられるか。」と、怒った。

 夫や長女が嫌いでも、私は美味しいので、
「毎年春は、土筆摘みに行こうよ。」と、友達に提案した。
 体内の活性酸素を退治してくれて、がんや老化防止になるのだから、こんないいことはない。

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